ゴルフ会員権を売却した際に発生した損失を他の所得と損益通算できる制度が、
今年4月1日以降の譲渡から使えなくなりそうです。
毎年のように損益通算廃止の可能性がささやかれてきましたが、
ついに最新の税制改正の案のなかに盛り込まれました。
損益通算ができない「生活に通常必要ない資産」に、主として趣味、
娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産が加えられることとなっています。
この代表格がゴルフ会員権です。
今年4月からの売却による損失分から適用できなくなります。
バブル期には数億円もの値を付けた高級ゴルフクラブの会員権も珍しくありませんでした。
土地や株などに加え、ゴルフ会員権は非常な高値で取り引きされました。
あらゆる投機商品のなかでも売買が手軽であることに加え、
ゴルフ=高級感というイメージから富裕層のステータスにもなっていました。
さらに株価のような相場の上下が少なく、土地同様に当時は「上がり続ける相場」で、
しかも土地のように建築規制や日当たり、駅からの距離などの細かい調査も不要なことから、
投機熱は一般のサラリーマンにまで及んでいました。
それがいまや100分の1程度にまで暴落しているとも言われます。
「売れば大損」ですが、損益通算制度で「かたきは討てる」くらいに考えていた人にとっては、
改正はまさに大問題です。
富裕層としては、損益通算できる間に売却するのも選択肢のひとつです。
あるいは、景気の上昇を機に、「売らずに値上がりを待つ」という選択もあり得ます。
バブル期までの高騰は望めないまでも、
東京五輪に向けた景気浮上は誰もが期待する人は多いかもしれません。
いずれにせよ、早めに選択肢を決めなければならないようです。
◆個人事業者の『交際費』の『必要経費性』
確定申告の作業を進めていく中で、悩ましいものの一つに『接待交際費』があります。
所得税では『交際費』について、法人税(租税特別措置法)のような法律の規定は存在しません。
個々の支出ごとに、その『必要経費性』を判断していくことになります。
もともと営利目的で活動している法人と異なり、個人事業主は『事業活動の主体』としての顔と
『家事消費の主体』としての顔の二面を持ち合わせています。
個人事業者の方の支出する『交際費』も、領収書など支払事実がハッキリしているものであっても、
業務遂行上必要なものなのか、そうでないもの(家事費)なのかの判断は難しいものです。
例えば、個人事業者のゴルフ接待費も業務遂行上必要なものである限り、
必要経費とすることを妨げるものはありません。
ただ、必要経費とするには、『業務との関連性』『業務遂行上の必要性』を立証することが求められているのです。
◆不動産貸付業者のゴルフ接待費否認例
H22年の国税不服審判所の裁決に、不動産貸付業者のゴルフ接待費について、
業務遂行上必要性がないものとして、不動産所得の金額の計算上、
経費算入を認めなかった事例があります。
この事例では、不動産貸付業者は7年間にわたり、
年間30回以上、金額にして各年60~190万のゴルフ接待費を計上し、
テナント代表者と元勤務先銀行の後輩などを接待していました。
これらの接待目的は『賃貸物件を優良テナントに長く貸し付ける』
『情報を得て不動産の購入を容易にし、購入資金の融資の点でも有利にする』ためであり、
業務遂行上必要であると、納税者側は主張しました。
これに対して、不服審判所は、テナント代表者の接待は『ゴルフをする必要があったとは認めがたい』、
元勤務先銀行の後輩の接待は『有用な情報が得られたとしても(中略)業務の遂行上
直接必要であったとまではいい難い』とし、結局これらのゴルフは、『本人の趣味・嗜好』であり、
必要経費には算入されないと判断しました。
もっとも、この事例では、実際にプレーしていない接待先を帳簿に記載したり、
女子プロゴルファーのレッスン代が含まれていたりと、かなり心証が悪かったようです。
客観的に『通常かつ必要』であると認められるものであるかがポイントのようです。
◆雇用保険の加入者となるべきか否か
雇用保険の適用事業所に雇用される労働者のうち、
雇用保険に加入する人(被保険者)と適用除外となる人がいます。
適用となるか否か判断しにくい次のような場合はどうなるでしょうか。
例で見てみましょう。
①法人の代表者・・・個人事業の事業主や法人の代表取締役は被保険者となりません。
②株式会社の取締役や監査役・・・取締役や監査役は委任関係にあるため、
被保険者とはなりません。
但し、取締役であっても会社の部長職や支店長等の従業員としての賃金や
就労実態等から労働者性が強く雇用関係にある人は兼務役員として被保険者になれます。
③事業主と同居の親族・・・事業主の同居の親族は原則として被保険者にはなりません。
但し、事業主の指揮命令下にあり就労実態や賃金が他の労働者と同様で事業主と
利益を共有する地位(取締役等)になければ被保険者となります。
④在宅勤務者…在宅勤務の人は事業所勤務の労働者と同じ就業規則の適用があり
在宅勤務者の業務遂行状況や始業終業等時間管理が明確か等で判断します。
⑤国外勤務者・・・国外での勤務形態が出張による就労者や海外支店への転勤であれば
被保険者となります。
国外出向者も雇用関係が継続していれば被保険者です。
但し、国外での現地採用者は国籍にかかわらず被保険者になりません。
⑥長期の欠勤者・・・労働者が育児休業や介護休業、私傷病で休み、
賃金が出ないときも雇用関係が継続していれば被保険者です。
⑦外国人労働者・・・適用事業所に勤務する外国人労働者は外国公務員や、
外国の失業補償制度の適用者を除き、被保険者となります。
また外国人技能実習生は企業と雇用関係にあるので被保険者となります。
但し、外国人の場合は就労資格による就労可否があります。
⑧2以上の事業場に勤務する人・・・同時に2つ以上の企業に雇用関係がある人は
原則として生計維持に必要な主たる賃金を受けている方で被保険者となります。
平成25年分の所得税等の確定申告から適用される改正がいくつかあります。
新たに適用が始まった復興特別所得税は、基準所得税額
(配当控除分などを元の所得税額から差し引いた後の所得税額)に2.1%の税率を乗じた額が
所得税に上乗せされる税制。
セットで盛り込まれた「復興特別法人税」は平成24年4月から3年間の期間限定でスタートしましたが、
今年3月31日に1年前倒しで廃止される予定です。
一方で復興特別所得税は、平成25年分から49年分まで25年間課税されます。
また、給与等の収入金額が1500万円を超える人の給与所得控除額が245万円の定額に変更されました。
昨年までの確定申告では、収入金額が1千万円超の場合の給与所得控除額は、
収入金額×5%+170万円で算出してきました。
収入金額が1500万円の場合は245万円、3千万円の場合は320万円、
5千万円なら420万円が給与所得から控除できたわけです。
しかし、25年分から245万円が上限になることで、
1500万円超の収入がある人にとっては決して少なくない額の増税となっています。
給与所得者にとって有利になるとされる改正としては、特定支出控除の見直しが挙げられます。
特定支出とは、通勤費用や転居費用、職務に直接必要な研修や資格取得のための費用、
単身赴任時の自宅への旅行費用などのこと。
一定の額を超えた場合、確定申告をすることで、超えた金額を給与所得控除後の金額から
さらに差し引くことができます。
まず、特定支出控除の適用判定の基準が、その年の特定支出の額の合計額が
「給与所得控除額の2分の1(125万円が限度)」を超える場合へと緩和されました。
そして、①税理士、公認会計士、弁護士の資格取得費、②65万円を限度にした一定の図書費用、
スーツなどの制服費用、交際費―などが新たにその範囲になりました。
小規模な同族会社の主宰者と生計を一にする配偶者その他の親族(親族等)が
その同族会社から役員として受ける報酬と個人事業主と生計を一にする親族等が
その事業主から受ける給与の性質は、類似しているようですが、
前者は会社法及び法人税法、後者は所得税法の適用を受け、その効果には差異があります。
但し、役員報酬は「職務執行の対価」として、他方、青色事業専従者給与は
「労務の対価」としてそれぞれ相当であると認められる金額が損金算入、
又は必要経費算入の要件となっています。
◆毎月の支給額に変更があった場合
役員報酬は、定期同額支給といって、一定の場合を除き、
事業年度の中途においてその報酬額を変更すると、
その変更前後の役員報酬の一部が損金算入できません。
なお、一定の場合とは、期首から3月以内の改定や法人の業績が著しく悪化した場合などです。
他方、青色事業専従者給与ですが、個人事業主が青色事業専従者給与として
納税地の所轄税務署長に届けた金額の範囲内であれば、
業績の一時低迷や資金繰りの悪化などにより毎月の給与に変更があったとしても
その支給額については、個人事業主の事業所得、
不動産所得又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されます。
また、年の中途において青色事業専従者給与の支給額を引き上げることも可能です。
この場合の手続きですが、「青色事業専従者給与の変更届出書」を遅滞なく
納税地の所轄税務署に届出ればよいことになっています。
なお、個人事業主が生計を一にする親族等に対して青色事業専従者給与を支給するためには、
その年の3月15日まで(その年の1月16日以後、
新たに事業を開始した場合や新たに青色事業専従者を有することとなった場合には、
その開始した日又は専従者を有することになった日から2月以内)に、
納税地の所轄税務署長に対して「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければなりません。
◆未払い計上の可否
法人の役員報酬については未払い経理した報酬についても損金算入が認められますが、
青色事業専従者給与に関しては実際に支給した金額のみが必要経費に算入され、
未払い経理した給与につては必要経費としては認めらません。
Copyright © 2013 Takada. All Rights Reserved.