経済産業省は、消費税率引き上げを踏まえた価格転嫁の状況についての
モニタリング調査結果を発表しました。
それによると、消費増税後の4月中旬の時点で、
増税分をすべては転嫁できていないと答えた企業は全体の約2割となりました。
政府は転嫁できていない分の負担が中小企業へ及ぼす影響は大きいとみていて、
転嫁拒否対策に注力していく構えを見せています。
経産省のアンケートは、帝国データバンクに登録されている
幅広い業種の事業者を対象に、4月11~17日にインターネット上で実施されました(回答数3898社)。
アンケートによると、事業者間取引で「全て転嫁できている」と答えたのは79.4%。
それに対して「一部を転嫁できている」は14.0%、「全く転嫁できていない」は3.7%と、
計17.7%の企業が増税分を完全には転嫁できておらず、
消費者向け取引でも「一部を転嫁できている」と答えた企業が13.8%、
「全く転嫁できていない」と答えた企業が3.7%で、こちらも計17.5%の企業が増税分を
完全には転嫁しきれていませんでした。
価格転嫁ができない理由としては「価格を引き上げると他社に取引を奪われてしまう
おそれがあるため」が一番多く、「取引先との力関係で立場が弱かったため」が続きました。
従業員規模でみると、「全く転嫁できていない」と答えた企業の割合が
もっとも多かったのは従業員5人以下の企業で、規模が小さく体力のない企業ほど
価格転嫁できていない状況が浮き彫りとなっています。
また従業員20人以下の企業では21人以上の企業に比べてアンケートの回答率が低く、
そこから価格転嫁できていない中小企業は今回の結果以上にあることがうかがえます。
◆有効求人倍率は昨秋から1倍超え
厚生労働省は「労働経済動向調査(平成26年2月)」の結果を発表しました。
調査結果によると、労働力の過不足状況は正社員等労働者を「不足」とする
事業所割合27%、正社員等労働者を「過剰」とする事業所割合は5%となっており、
正社員等労働力過不足判断指数(不足と回答した事業所の割合から過剰と回答した
事業所の割合を差し引いた割合)はプラス22ポイントとなり
連続の不足超過となっています。
求職者1人に何人分の求人があるかを示す有効求人倍率は1倍を超えており、
1倍を超えているという事は人手が足りているかどうかの判断基準から見て
人手不足感が強まっていることを示しています。
◆産業別にみると
金融業や保険業では過剰超過でマイナス2ポイントです。
しかし以下の産業は不足超過となっており特に建設業は
アベノミクスの経済効果で仕事量が増え、プラス44ポイント、
医療福祉はプラス42ポイント、運輸業・郵便業プラス40ポイント、
サービス業はプラス34ポイント、学術研究、専門、技術サービス業33ポイントと
人手不足感が強まっています。
すでに昨年東京オリンピック開催決定あたりから仕事量も増える傾向にあり、
特に建設業では求人しても人が集まらないことが増えています。
◆これからの労働力不足に備えて
人手不足にはどのような対策を取っていくのがよいでしょうか。
一つ考えられるのは今まで働いていなかった層も視野に入れて考える必要もあるという事です。
65歳までの雇用延長制度も始まっていますが高齢者の活用や
家庭の主婦等の女性の活用も考えられます。まず現在在籍している従業員を
退職させないような施策も必要でしょう。
賃金水準の見直しも必要かもしれません。
仕事量が増えるのはありがたいのですが人手が足りなくなると仕事が回りません。
効率を考えた仕事をする必要もあるでしょう。
50年後には労働力人口は2割減少するという試算もあり、
目の前の求人もままならないのにこの先は長期的に見ても人手不足は続くという事でしょうか。
◆「消費税」は間接税です。
本年4月に消費増税率が5%から8%に上がり、来年の10月には更に10%に上がるかもしれない中で、
今一度「消費税」というものの基本を知っておきましょう。
消費税は、税金を「支払う人」と「納める人」が異なる「間接税」というタイプの税金です。
「支払う人」とは一般消費者です。
「収める人」とは事業者です。
事業者とは個人で事業を営む者と法人をいいます。
事業者は預かった消費税から自分が支払った消費税を差し引いて、
その残りを税務署に納めます。
ですから基本的に事業者は消費税を一切負担しておりません。
その意味では事業者にとって消費税は5%でも8%でも関係ありません。
◆課税取引と不課税取引
消費税は、国内において事業として行われる取引にかかる税金です。
事業として行われる取引とは、対価を得て行われる資産の譲渡・貸付や役務の提供を言います。
ですから、海外の取引や、事業として行われない取引には消費税はかかりません。
これらを不課税取引と言います。
事業として行われない取引とは、香典・ご祝儀・寄付行為・損害賠償等が該当します。
◆課税取引と非課税取引
不可税取引以外の取引は全て課税取引ですが、課税取引のなかで政策的に
非課税として列挙した取引を非課税取引と言います。
利息・保険料・土地の譲渡等が該当します。
非課税取引を主たる収入としている事業者が収入を得るために支払った消費税は、
預かった消費税がありませんから、そのままと言うことで、一般消費者と同じ「消費税を支払う人」と言うことになります。
◆課税取引と免税取引
海外への輸出も課税取引ではありますが、最終消費地が国外であるため、
現地の消費税等がかかることや、消費税を課すことによって、
企業の競争力がそこなわれる等の理由により消費税を免除しております。
これを免税取引と言います。
海外への輸出を主たる収入としている事業者は、消費税を免除されているだけで
収入自体は課税取引ですので、「消費税を納める人」に変わりはありません。
全て免除され預かった消費税が0の場合は支払った消費税は全額還付を受けることができます。
◆自営業や自由業など国民年金1号の方対象
20歳以上60歳未満で国民年金の第1号被保険者であり、保険料を納付している方は
国民年金基金に加入することができます。
国民年金基金は老齢基礎年金に上乗せして老後の生活保障を厚くする公的年金です。
都道府県が運営する地域型国民年金基金、職種単位で作られた職能型基金があります。
◆平成24年総務省統計局家計調査から
高齢者夫婦が実際に必要とする生活費は月27万円だと言います。
国民年金は20歳から60歳未満のすべての期間の保険料を納めても夫婦で約月13万円です。
ゆとりある老後のためにはこの差を埋める必要があります。
サラリーマン等は老齢基礎年金に加え厚生年金にも加入しているので国民年金の基礎年金しか
加入しない人に比べて年金給付額が多くなります。
そこで個人年金である国民年金基金で上乗せした年金を受け取ることができるようにしています。
◆選べる年金タイプ
国民年金基金は口数制になっていて年金額や給付の型は自分で選択します。
給付の型は終身年金のA型・B型、確定年金のⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の
7種類があります。
1口目の終身タイプでAかBを選択します。
A型は納付期間中や年金受給までの待機期間、65歳から15年間の保証期間があり、
その間に本人が亡くなった場合に遺族一時金が支給されますが、
B型は1万円のみの支給です。
2口目は1口目に上乗せする形でいくら上乗せしたいのかを考え終身型・期間限定型の中から選択します。
途中口数の変更はできますが月額保険料は1と2の両方を足した額です。
掛け金の月額表を確認して毎月の支払額に無理のない計画を立てましょう。
国民年金基金の加入は任意ですが一度加入すると任意脱退ができない事となっています。
但しサラリーマン等になった時や国民年金保険料を免除された時は資格喪失します。
◆税制上の優遇
一般の個人年金は年4万円までの所得控除しか受けられないのですが
国年基金は掛け金の上限月68,000円まで社会保険控除とされます。
例えば課税所得が約400万円掛け金は年30万円納めた場合で所得税・住民税が9万円ほど軽減されます。
年金を受けた時も公的年金控除の対象となります。
税金の納付は国民の義務ですが、会社として節税を心がけるのは当然の企業努力です。
しかし、そのときに税額の減少額だけに目を向けてはいけません。
企業の終局的目標は将来キャッシュフローの最大化です。
税額を圧縮するのは、税金がキャッシュフローの減少要因の一つとして作用するからに他なりません。
本業で利益が大きすぎるから、利益を削減するために銀行から借入金を借りて
機械などの減価償却資産を購入するということが行われることがあります。
たとえば、100の借入金を銀行から借入(借入期間10年、金利5%、期日一括償還)、
100の機械(耐用年数10年、定額法による減価償却)を購入したとします。
これにより、利益(税務上の所得)は金利の5と減価償却費10を合わせて15減少します。
実効税率を40%とすると1年間の節税額は6になります。
これが10年間続くとすれば、節税額はトータルで60になります。
確かに税金に限定したときのキャッシュアウトは60減少します。
しかし、借りた借入金は10年後に返しますから、時間価値を無視すれば、
キャッシュフロー的にはプラス・マイナス0ですし、減価償却費もキャッシュフローには関係ありません。
プラスのキャッシュフローは税額減少分の60、マイナスのキャッシュフローは10年間分の金利50と
機械購入代金100を合わせた150ですから、ネットでマイナス90のキャッシュアウトになります。
結局この設備投資で10年間で最低90以上のキャッシュフローのプラスを生み出すかどうかを検証する必要があります。
節税には大きく分けて、買う節税と売る節税があります。
減価償却資産の購入は典型的な買う節税です。
買う節税では減価償却費と金利で税金は減少しますが、
資産購入に伴うキャッシュアウトがあることを見逃してはいけません。
一方、売る節税の損得計算はとても明確です。
たとえば、含み損を抱えた遊休資産の売却を考えてみましょう。
簿価100の土地の時価が60だったとします。
したがって、含み損が40あります。
この土地を売却して節税するときのキャッシュフローは次のようになります。
時価60で売却するのですから、含み損が実現損に変わり、売却損失40が発生します。
実効税率を40%とすると、税額は16減少します。
キャッシュフローのプラスはこれだけではありません。
資産そのものの売却額60もプラスのキャッシュフローを生み出しますから、
合計のキャッシュフロープラスは、税額の16と売却代金60を合計した76になります。
このように、含み損を抱えた資産の売却に伴うキャッシュフロー計算は明確です。
節税を考えるときには直接に減少する税金だけを考えるのではなく、
その節税行為全体のキャッシュフロー計算が重要であること、
及び、節税には買う節税と売る節税があり、買う節税のキャッシュフロー計算は不確定なのに対し、
売る節税のキャッシュフロー計算は明確だということがいえそうです。
節税の明確な第一歩は、将来のキャッシュフロー収支の不透明な設備投資ではなく、
含み損のある資産の整理だということを再認識したいものです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
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