民間投資を喚起する成長戦略の一環として、今年度の税制改正で創設された
「生産性向上投資促進税制」の1つに、「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」
を取得等した場合の投資減税があります。
◆制度の概要(適用要件)について
対象設備は、機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物、
ソフトウエアで用途・細目についての制限はありませんが、
①投資計画における投資利益率が年平均15%以上(中小企業等は5%以上)で、かつ、
②最低取得額以上の要件を満たすことが必要です。
なお、投資利益率は、次の算式で計算することになっています。
投資利益率=(営業利益+減価償却費)の増額額(設備投資等をする年度の
翌年度以降3年度の平均額)/設備投資額(設備の取得等をする年度におけるその取得等する設備の取得価額の合計額)
しかし、この投資減税の適用にあたっては、事前に経済産業局の確認書の取得が前提となっています。
具体的には、経済産業局に生産ラインやオペレーションの改善に資する設備投資計画の確認申請書の提出、
そして、その前提として当該計画について税理士等の事前確認が必要で、その手続きは結構煩雑なものとなっています。
以下、この制度の適用にあたっての申請手続きを概観してみたいと思います。
◆確認申請手続きの概要
(1)申請書に記載すべき事項
確認申請書は、概ね、6項目から構成されていますが、ここでの記述のポイントは
①生産性向上設備等が事業者の事業の改善に資することの説明と
②基準(投資利益率15%又は5%)への適合状況の記述です。
例えば、①では、生産の歩留まり率を何%改善できるか等の説明、
②では、投資利益率の達成が可能である旨を数値等でその根拠を明示して記述する必要があります。
(2)税理士等の事前確認書
税理士等が、申請書と裏付けとなる資料に齟齬がないかどうか、特に、
「基準への適合状況」に記載されている数値には算定根拠資料があるかどうか等を確認し、投資計画との合致を報告するものです。
(3)申請者は、翌年度以降3年間、投資の実施状況を確認書の交付をうけた経済産業局に提出することになっています。
この制度、まるで補助金の交付を受けたかのような煩雑な手続きを求めており、その使い勝手はイマイチのように思います。
◆ポイント引当金とは?
近年の法人税の改正は「税率軽減・課税ベース拡大」の方向で進んでいますが、
その際に話題に挙がるものに引当金があります。
税務では債務確定主義の見地から見積計上である引当金は徐々に整理されてきましたが、
会計分野では、今日的な引当金も増えてきています。
大手携帯電話会社、家電販売店、百貨店等ではポイント引当金が問題となります。
これは、ポイント制度(商品購入・サービス利用の都度ポイントが付与され、
次回以降の購入・利用の際にポイントを使用できる制度)を採用している企業に用いられ、
NTTドコモのH25.3期連結決算では1,731億円、KDDIは916億円とインパクトが大きな数字を計上しています。
◆会計上は明確なルールはないが…
金融庁ではH20に「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」を公表しています。
この時点ではポイント発行について明確な会計基準はなく、
発行企業が企業会計原則等を考慮しながら個別対応している状況で、
売上値引処理か販管費処理とするかなどスタンスの違いが見られました。
それでもポイント制度が定着し、過去の実績データも蓄積してきたため、
「ポイント使用時」に費用処理するとともに、未使用ポイント残高に過去の実績(失効率)を加味して引当計上する
流れが出来つつあったとのことでした。
現時点でも状況は変わりませんが、IFRS導入企業は「ポイント発生時」に費用認識するため、
計上時期の変更による影響が大きいと言われています。
◆中小企業は「金品引換費用の未払計上」
中小企業の場合には、法人税基本通達にある「金品引換費用の未払計上」を用いることが考えられます。
これは①金品引換券が販売価額等に応ずる点数が表示されており、
②たとえ1枚の呈示でも引き換える制度ならば、次の算式による金額を、
商品の販売事業年度(ポイント発生時)に損金経理により未払計上できるというものです。
【1枚又は1点について交付する金銭の額×その事業年度に発行した枚数・点数】
蓄積型ポイント制度による場合や、値引処理とされる場合には、
確定債務と同視しがたいものとして適用できないケースもあるようですので、
税務も考慮したキチンとした制度設計が必要です。
◆対価のない名義変更と贈与
相続税の通達に、対価ナシで不動産、株式等の名義の変更があったら、
それは贈与行為と判断すると書かれています。
そして、この通達では預金の名義変更に触れていないので、
預金については名義変更をしても贈与税の課税対象にならない、との見解が流布しています。
しかし、名義預金に対しても贈与税課税されるというのが原則です。
◆名義預金とは何か、贈与の法要件
子供名義の預金通帳をつくり、預金通帳や印鑑の管理、そして預金の引き出しや預け入れは親自身が行っている、
などというとき、一般にこの預金は名義預金、すなわち子供の名前を使った親自身の預金だと
いわれることが多いかと思います。
民法上、贈与は契約なので、贈与者が贈与の意思を持っているだけでは契約は成立せず、
受贈者による受贈の意思も必要で、従って、名義預金とは、贈与の契約が未成立状態で
所有権変動のおきていない財産、と法律解説的説明が一般にされています。
◆教育資金贈与としての預金は名義預金?
去年の4月からはじまった1500万円非課税の教育資金一括贈与のために
子供名義の預金を子供自身の了解なしに設定しても、多分、通帳も印鑑管理も出し入れも
親自身がするはずなのに、名義預金とは言われません。
親は未成年の子の親権者で、法定代理人ですから、親から子への贈与において、
親は贈与者であるとともに、受贈者である子の代理人として贈与契約の当事者になるので、
贈与契約は有効に成立します。
祖父母が孫に預金の贈与をして、孫の親にその預金を委ねる場合も有効です。
◆未成年者の子の預金は名義預金にならない
親権者たる親が贈与の意思を持って子の為に預金をする行為は有効な贈与契約による行為なので、
ここから名義預金が生ずることは原理的にあり得ません。
名義変更の捕捉が困難という理由だけで、名義変更時課税ではなく、
捕捉時課税だというのも根拠のない言い分です。
◆名義預金となるケース
契約当事者になれる20歳以上の子に対する預金の無断の贈与は有効な贈与になりません。
20歳未満のときに設定した預金でも20歳以後に預け入れた部分も同じです。
配偶者に対するものも同じです。
これらの場合には、名義預金になり得ます。
◆ブラック企業とは何か
ここ数年新卒採用の時期になるとブラック企業に関する事が報道されます。
ブラック企業とは明確な定義があるわけでなく、厚労省よると「若者の使い捨てが疑われる」
「離職率が極端に高い」「過重労働があり、労基法違反の疑いがある」という企業であり、
ブラックとは表現されていません。
◆具体的には次のような行動を指します
①嫌がらせ、いじめや些細な問題で懲戒処分を行う等、退
職したくなるように追い込み退職勧奨を行う。
②法定労働時間をはるかに超えて働かせ、法的要件未整備のまま管理監督者、
裁量労働制、定額残業代等の適用があるとして残業代に反映させない。
③かなりな長時間労働があってもそれを解消しようとせず、
働く人の健康を配慮しない。時に健康障害を起こす。
④採用手続きにおいて労働条件を明示せず、合理的理由のない内定取り消し、
実態に合わない偽装請負契約等。
⑤曖昧な理由の解雇、理由を示さない解雇。
⑥労働契約の軽視、内容の一方的変更、年休取得を認めない、健康診断を実施しない等。
◆ブラック企業の生まれた背景
前から長時間労働の企業はありましたしこのような企業の数が増えているとも思えません。
今、労働環境の良くない企業が取り上げられる背景には以前は長期雇用が前提であり、
将来の昇給等見返りが期待できていたものが、先々の事が描きにくい時代になった事もあります。
このような企業では継続勤務が困難であり、又それをインターネット等で知られるようになったとも言えるでしょう。
◆今後の取り組み
ハローワークでは2015年度の大卒、大学院卒予定者に向けた求人票に
過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄が設けられ、離職率を新卒者が見て異常に高ければ
応募を見送るであろうと考えているようです。
但し記入が任意の為、効果は限定的と思えます。
また、厚労省では一定の労務管理体制が整備され、詳細な採用情報を公表、
求人をする中小企業に「若者応援企業」と認定し、いわゆる「ホワイト企業」をアピール、
イメージアップに役立てようとしています。
◆永く続く企業とは
企業にとって大切な事とは何でしょうか?
それは「継続する」という事ではないでしょうか?
顧客にサービスや商品を提供し喜んでいただく、社員を雇用し、その家族も幸せにする。
納税や地域社会に貢献しながら存続し続ける、それは理想の姿かもしれません。
しかし企業が存続し続ける続けることは容易ではありません。
経済変化や企業間競争、有力取引先の消失、災害、不祥事の発生等様々なリスクが付き物です。
こうした中、永く営業を続けている企業もあります。
その96%は中小企業であり、日本で創業100年以上の企業は2万6千社(帝国データバンク調べ)と言われ、
世界最古の企業と言われる西暦578年創業の寺社建築の金剛組と言う企業も日本にあります。
◆長寿企業の8割が明治時代に創業
明治時代は殖産興業の政策の下、工業化、近代化が進んだ時代です。
業種的には製造業と卸・小売業が多く、少ないのは建設、運輸、金融、保険、不動産、
サービス業等で昔は物を作って売ることが主流だったからでしょう。
製造業の中でも食品・酒関連が多く、金物卸、繊維衣類も多い方です。
また、地場で家族中心の小売業が半数近くです。
◆企業経営者の在位期間
先代の経営者が25年から30年位で60代から70代になった頃に
30代から40代の子に経営を任せるというのが一般的です。
データでみると1990年代以降は設立30年以上企業が倒産するケースが増加傾向にあります。
在位が25年から30年という事から考えると1回は世代交代した後に倒産の憂き目にあう率が増えているとも言えます。
◆企業が存続し続けるには
企業の継続にはどのような事が必要なのでしょうか。
今後の経済・社会情勢は、人口の減少やグローバル化による競争での利幅縮小等も考えられます。
その中でも継続するための課題とは、長寿企業から見てみると次のような事でしょう。
①新市場開拓や新事業開発等の経営革新
②コスト削減等、効率・生産性の向上
③人材の確保育成 社員を大事にする経営
④継続経営者の育成
当然の事のようですがこれを持続し続けるという事は大変なことです。
しかし、地道に続けることが企業を成長、存続させて行くのでしょう。
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