◆固都税は「相続人代表者指定届出」を提出
亡くなられた方が有していた不動産の所有権は、遺産分割協議が成立するまでの間は定まりません。
法務局の登記簿上は亡くなられた方の氏名のままで、相続の権利がある方全員が所有者という状態(共有)になります。
その期間の不動産に対する固定資産税・都市計画税の納税については、市役所に「相続人代表者指定届出」を
提出することで、市役所との対応窓口となる相続人の代表者を定めることとなります。
遺産分割協議が成立し、相続登記が済めば、新たな所有者の方に納付書が送付されます。
◆未分割遺産の不動産所得(所得税)
未分割の不動産が賃貸物件の場合には、遺産分割協議が調うまでの間も、
賃貸収益が生ずることとなります。
この間に生ずる賃貸収益については、その物件が共有状態であることから、
共同相続人の法定相続分に応じて申告することになります。
なお、遺産分割協議が調い、分割が確定した場合であっても、その効果は未分割期間中の所得の帰属に
影響を及ぼすものではありませんので、分割協議で確定した所有状況に基づく更正の請求等を行うことはできません。
◆消費税の「基準期間における課税売上高」
相続開始年の消費税についても、この法定相続分に応じたテナント収入・駐車場収入が課税売上高となります。
なお、遺産分割協議が調った後に、新たな所有者の方が、この共有期間を「基準期間における課税売上高」として
納税義務を判定する場合でも、この法定相続分に応じた「基準期間における課税売上高」で判定を行います。
◆相続税の申告期限までに分割できない場合
この未分割の状態が、相続税の申告期限(亡くなられた日から10カ月以内)まで続いている場合でも、
税務署は待ってはくれません。
この場合、各相続人の財産を法定相続分に応じて取得したものとして計算を行い申告することになりますが、
共有状態のままでは、「小規模宅地等の課税価格の特例」の適用を受けることができません。
ただし、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、特例の適用を受けることができる措置が設けられていますので、
「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して提出することになります。
政府は、少額投資非課税制度(NISA)の〝子ども版〟を平成28年に創設する方針です。
投資にあまりなじみのない親世代の投資促進を狙うものです。
いわゆる「子ども版NISA」は、日本証券業協会などが創設を求めていたもので、
今後は金融庁が年末の税制改正大綱に向けて与党と調整します。
投資上限は現行の大人版と同じ100万円。
祖父母や両親が孫や子どもの名義で投資すれば、子どもが受け取る配当や将来の売却益を
非課税にする制度です。
利用対象者は0歳~18歳となる見通し。
NISA口座への譲渡以外に贈与があり、合わせて年間110万円を超えた場合は
贈与税がかかることになりそうです。
子ども版NISAは引き出し時の制限をかけるのが特徴です。
災害や両親の不慮の事故などを除いては、18歳までは原則として非課税では
引き出せないようにする方針となっています。
金融庁の発表では、今年3月末時点で30歳以下の投資割合は全体の10.9%と、
若年層の利用が低い実態が明らかになっています。
政府は子ども版NISA創設で若年層の需要拡大につなげたい意向です。
加えて、1600兆円の個人金融資産の大半を持つ60歳以上の祖父母にも利用を促します。
また、通常のNISAも拡大策が検討されています。
非課税枠を200万円~300万円に引き上げる案が浮上しています。
現在5年間の非課税期間も段階的に延長していく予定です。
教育資金一括贈与が非課税になる期間が延長されそうです。
孫の将来にわたる教育資金として、まとまったお金を非課税で贈与できる制度が始まって
1年が経過しましたが、平成27年末としていた期限を政府は2~3年延長する方針です。
また、非課税対象のお金の使い道を子育てなど教育以外にも使えるようにすることも検討するとのことです。
直系尊属から30歳未満の孫などへ教育目的の資金を一括して贈与する場合、
受贈者一人当たり最大1500万円(学校等以外は500万円)まで非課税で贈与できるようになりました。
孫などが30歳になった時点で終了し、使い切れなかったお金には贈与税が課税される仕組み。
直系尊属からの贈与であるので、ひ孫や玄孫(やしゃご)のほか、親から子への贈与も対象です。
信託協会によると、昨年4月から今年3月までの教育資金贈与信託の契約数は6万7073件、
信託財産設定額合計は4476億円に達しています。
2年間で見込んでいた5万4千件をすでに上回る好調ぶりです。
政府は高齢者が持つ金融資産を若者世代に分散する必要があると判断し、
2~3年の延長を判断した模様。
年末の税制改正大綱に盛り込みたい意向です。
また、非課税となるお金の使い道を広げることも検討しています。
現行では授業料や習い事の月謝代に限られていますが、子育ての費用も対象にする案が浮上しているといいます。
認知症・障害者の方が相続人の場合
◆相続人に認知症や障害者の方がいる場合
遺産分割協議には相続人全員の合意が必要です。
これは相続人の中に認知症の方や障害者の方がいる場合でも同様です。
ただし、その方が意思能力(正しい判断能力)を有していないときは、
遺産分割協議は有効に成立しません。
このような場合、家庭裁判所に「後見開始の審判」の手続きをとり、
成年後見人を選任することとなります。
成年後見人は意思能力を欠いた相続人の代理人となり、分割協議に出席し、
必要な署名等を行うことになります。
(一般に、後見人は、その相続人の不利益にならないように、法定相続分程度の遺産を取得できるよう協議を進めるようです)
◆所得税・相続税の障害者控除の適用
成年後見制度における成年被後見人(家庭裁判所において「精神上の障害により
事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた者)については、
H24.8の名古屋国税局文書照会で所得税法上、障害者控除の適用となる「特別障害者」に
該当することとされています。
また、相続税法上の障害者控除の適用となる「特別障害者」については、
所得税法上の障害者控除の対象となる「特別障害者」に該当する者と規定しているため、
介護認定が低く、障害者手帳の交付を受けていない方でも、「特別障害者」として所得税・相続税の障害者控除の
適用を受けることができます(H26.3東京国税局、文書回答事例)。
◆「納税管理人の届出」を後見人宛てに
成年後見制度は「自己の財産の管理・処分」を「することができない(後見相当)」
「常に援助が必要である(保佐相当)」「援助が必要である(補助相当)」という判断能力の程度により
3種類に分かれています。
財産管理委任契約(見守り契約)を締結する場合には、「納税管理人の届出書」を
納税地(本人)の所轄税務署に提出し、申告書等の送付先・連絡先を成年後見人宛にすることで、
税金関係も後見人に対応してもらうことができます。
また、成年被後見人・被保佐人は会社法により取締役になることができません。
取締役の方に成年後見人が付いた場合には、直ちに役員変更を行わなければなりません。
◆税制調査会で検討される
安倍内閣は新しい成長戦略の中で子育ての負担を軽くしたり、
企業に登用を促したりする女性の社会進出の後押しを進めようとしています。
専業主婦等に有利な社会保障制度の見直しの検討を始めました。
人口減と高齢化が進む中、労働力確保と質の向上が持続できる社会にするため、
女性の労働力率を上げてゆくという観点から長く議論されてきました。
配偶者控除の扱いはこれからどのように変わろうとしているのか見てみたいと思います。
◆配偶者控除の境界103万円の壁
しばしば出てくる「103万円の壁」とは配偶者(妻)の収入が年103万円以下の世帯で
夫の所得税の負担を軽くする仕組みです。
妻の年収が103万円以下なら夫の年収から配偶者控除として一律38万円を控除します。
妻の年収が103万円超から141万円未満の間であれば配偶者特別控除があり、
38万円から3万円の範囲で行われます。
また、多くの企業では夫が配偶者控除を受けられる妻がいる場合に
家族手当を支給するところが多いのも現状です。
さらに妻の年収が130万以上になると健康保険の被扶養者と国民年金の3号被保険者からも外れ、
妻自身の社会保険料がかかるようになります。
就業調整は103万円、130万円の時に行われることが多いといえるのかもしれません。
このような制度であると労働時間を抑える就業調整する人が多いといわれています。
◆見直しが与える影響
配偶者控除に代わるものとして議論されているのが家族控除です。
妻の年収にかかわらず、夫婦で76万円を世帯の控除額とする案です。
これは今まで配偶者控除を受けていた世帯では負担増になりそうです。
制度変更で可処分所得が減れば収入を増やそうともっと働こうとするかもしれません。
パートよりフルタイムへ、より高い賃金へと移動するかもしれません。
ただし実際は長時間働きたい人ばかりではないでしょう。
現在国民年金の3号被保険者は保険料がかかりませんが
2016年10月からは従業員501人以上の企業で、週20時間以上勤務、年収106万円以上の場合は
社会保険に加入することになっています。
税制と併せて社会保険の動きも見ていく必要があります。
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