2015年度税制改正において、地方創生を推進するための施策の一つに、
ふるさと納税の促進策が盛り込まれております。
個人住民税の特例控除額の上限の引き上げを行うとともに、
確定申告が不要な給与所得者等がふるさと納税を簡素な手続きで行える
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を創設し、これとあわせて、地方公共団体に対し、
返礼品等の送付について、寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を要請しております。
ふるさと納税は、自分の生まれた故郷だけでなく応援したい自治体など、
どの都道府県・市区町村に対する寄附でも対象に、寄附金のうち2,000円を超える部分について、
一定の上限まで、原則として所得税・個人住民税から全額が控除されます。
具体的な控除額の計算は、所得税「所得控除額(寄附金-2,000円)×所得税率」が軽減され、
個人住民税の基本部分として「(寄附金-2,000円)×10%」が税額控除されます。
さらに、控除できなかった寄附金額を、個人住民税の特例分として
「(寄附金-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税率)」との計算により全額控除します。
この特例控除額の控除限度額は現行1割ですが、2016年度分以後の個人住民税から2割に引き上げられます。
また、ふるさと納税による控除を受けるためには、寄附をした翌年に確定申告を行うことが必要でしたが、
2015年4月1日以後は、確定申告が不要なサラリーマン等の寄附については、
5つの自治体までならば申告不要とする「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されます。
ただし、6ヵ所以上に寄附する場合には、従来どおり、すべての寄附の受領書を添えて確定申告する必要があります。
なお、地方公共団体に対しては、ふるさと納税について、寄附金が経済的利益の無償の供与であることや、
寄附金に通常の寄附金控除に加えて特例控除が適用される制度であることを踏まえ、
豊かな地域社会の形成及び住民の福祉の増進に寄与するため、
都道府県・市区町村がふるさと納税に係る周知、募集等の事務を適切に行うよう要請しております。
◆親の家屋に子が増築した場合
親が所有する家屋を子の資金で増築するということがよくあります。
この場合、増築後の登記状況等により贈与税が課税される恐れがあります。
例えば、父が所有する木造平屋の家屋(時価1,000万円)に、子が家屋の時価と同額の1,000万円をかけて
2階部分を増築したとしましょう。
◆民法における『付合』の考え方
この場合、民法における『付合』の考え方を理解する必要があります。
『付合』とは、別個のものがくっついて一つになるイメージになります。
不動産の場合、『不動産の所有者は不動産に従として付合した物の所有権を取得する』(民242)とされています。
この例では、父所有の家屋(主)に対して、増築部分が『付合』した物(従)とされれば、
増築部分も父が所有権を有することになります。
一般には増築部分が①事実上、分離復旧させることが不可能で、②2階部分だけ独立して取引できる
ような状態でなければ、『付合』したものと見られます
(なお、増築部分が区分所有権の対象となるものについては、『付合』は生じません)。
◆『持分変更』で高率の贈与税課税を避ける
今回の増築部分が区分建物として独立性がない場合、一般的には『付合』が成立し、
増築部分の金銭負担者(子)と取得財産の名義(父)が異なることになります。
そのため、子から父に対して1,000万円の贈与があったものして、
父に高率の贈与税が課されます。
もっとも、負担分=持分とする形(本事例では1/2)で登記することで、
利益の移行がなかったものとして、贈与税課税を回避することができます。
国税庁HPの質疑応答事例では、①旧家屋の持分2分の1を父から子に時価で譲渡し
(本事例では1,000万円×1/2=500万円)、②その譲渡代金は、子が支出した増築費用のうち
父の負担すべき部分の金額 (本事例では1,000万円×1/2=500万円)と相殺することで、
贈与税の課税関係は生じないとする例を示しています。
このように高率の贈与税課税を避けることはできますが、①の持分異動分については、
父の譲渡所得を認識しなければなりません
(この譲渡は親子間譲渡のため、居住用財産譲渡の特例等は適用できません)。
同様のケースならば、登記及び譲渡の税負担を事前にシミュレーションしておくことをお勧め致します。
2015年度税制改正において、少子高齢化の進展・人口減少への対応として、
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が創設されます。
制度の概要は、20歳以上50歳未満の子や孫(「受贈者」)の結婚・子育て資金の
支払に充てるためにその直系尊属(「贈与者」)が金銭等を拠出し、
信託銀行や銀行等、金融商品取引業者に信託等をした場合には、
信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき
1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、2015年4月1日から2019年3月31日まで
の間に拠出されるものに限り、非課税とするものです。
非課税枠は1,000万円ですが、結婚に際して支出する費用については300万円を限度となります。
上記の「結婚・子育て資金」とは、内閣総理大臣が定める
①結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む)に要する費用、
住居に要する費用及び引っ越しに要する費用のうち一定のもの
②妊娠に要する費用、出産に要する費用、子の医療費及び子の保育料のうち一定のもの、
に充てるための金銭をいいます。
現行の孫などへの教育資金の一括贈与1,500万円までの非課税制度と同様に、
信託銀行等に子や孫などの受贈者名義の専用口座を作って利用します。
実際にかかった費用を証明できる領収書などを銀行に提出し、
対象となる費用と認められますとお金を引き出せる仕組みです。
受贈者が50歳になった時点で口座に残っている資金には贈与税が課されます。
また、祖父母や両親などの贈与者が亡くなったときも、残金があれば相続税の課税対象となります。
なお、教育資金の一括贈与非課税制度については、
①対象教育資金の使途の範囲に、通学定期券代、留学渡航費等を追加
②金融機関へ提出する領収書等に記載された支払金額が1万円以下で、かつ、
その年中の合計支払金額が24万円までのものは、その領収書等に代えて、支払先、
支払金額等の明細を記載した書類を提出でき(2016年1月から適用)、適用期限も2019年3月31日まで延長されます。
(注意)
上記の記載内容は、平成27年2月17日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
◆青色事業専従者に対する退職金
個人事業者の所得の金額の計算上、青色事業専従者に対する退職金の
必要経費算入は認められておりません。
所得税法では、専従者が受ける給与は給与所得の収入金額とするものとされています。
したがって、退職所得の収入金額とされるものは、専従者給与とすることを予定されていないと解されています。
◆専従者が利用できる共済制度
ただし、直接退職金を支払うことができなくとも、小規模企業共済や中小企業退職金共済(中退共)を
利用することが考えられます。
実はどちらの共済制度も、従来は個人事業者の専従者の加入が認められていなかったものですが、
平成23年より加入ができることとなりました。
この場合、小規模企業共済では専従者を「共同経営者」として、中小企業退職金共済では、
専従者を「従業員」として加入することになります。
そのため、青色専従者の場合は、「共同経営者」か「従業員」かのステイタスを選択せざるを得ないため、
重複して加入することはできないこととなります。
◆小規模企業共済制度を利用する場合
小規模企業共済に加入する場合、青色事業専従者は「共同経営者」として自己が契約する形になります。
したがって、その掛金は青色事業専従者の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)を適用して、
専従者の所得税額などを減らす形となります。
◆中小企業退職金共済制度を利用する場合
一方、「従業員」の立場で加入する中小企業退職金共済の掛金は、専従者給与を支払う
個人事業者の事業所得などの所得の金額の計算上、必要経費に算入することになります。
退職金を直接支払う場合には、必要経費算入が認められていないのに、
中退共の掛金が必要経費となることに疑問がないわけではないですが、
他の従業員がいる場合に、すべての「従業員」が加入(普遍加入)して平等に取り扱われ、
「従業員」性が担保されていることが前提となります。
どちらの制度も受取時には、一時金の場合には、退職所得(任意解約の場合は一時所得)、
年金の場合には、雑所得とされます。
◆宅建業者が作成する不動産の契約書
不動産取引のプロである宅地建物取引業の方が関わる不動産取引では、
契約締結前に『重要事項の説明』と契約締結後に『契約内容記載書面の交付』が
行われます。
前者の説明の場面で示される書類―『重要事項説明書』は、宅建業法35条に規定する書面のため
『35条書面』と呼ばれ、後者の書類は同法37条に規定する書面のため『37条書面』と呼ばれます。
それぞれ書面で記載する項目は異なりますが、37条書面の必ず記載する条項は次の通りとなります。
①当事者の氏名・住所
②物件の特定に必要な表示
③物件の引渡し時期
④移転登記申請時期
⑤代金等の額、支払時期、支払方法
尚、この必要的記載事項を記載した契約書であれば、それが37条書面として用いられます。
◆税務上の不動産譲渡損益の計上時期
ところで、税理士が税務判断の参考とする法人税・所得税の通達には、
不動産の譲渡の時期は、次のように記されています。
法人が不動産を『固定資産』として譲渡する場合には、不動産の譲渡日は原則として『引渡し日』
(土地等の引渡し日が明らかでないときは、①代金のおおむね50%を収受する日と
②所有権移転登記申請日のいずれか早い日)、特例として『契約効力発生の日』が採られます。
尚、宅建業者自身が不動産を『棚卸資産』として譲渡する場合には、大量に反復的に取引が行われることか
ら契約日発生基準を採用することはできず、引渡基準のみが適用されます。
個人の場合も、原則『引渡し日』、特例『契約効力発生日』ですが、法人のような『引渡し日』が明らかでない場合の
代金の50%収受日等を『引渡し日』とする規定はありません。
◆収益計上時期が判断しやすい契約書
ここで、宅建業者の方の作成する契約書ならば、必要的記載事項として、
これら通達で示された日が網羅的に示されていることが分かります。
実際の引渡し・代金支払状況によりますが、収益計上時期の判断がとてもやり易くなります。
親族間取引では、不動産取引に不慣れな方が契約書を作成する場面もあると思いますが、
参考としてはいかがでしょうか。
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