◆宅建業者が作成する不動産の契約書
不動産取引のプロである宅地建物取引業の方が関わる不動産取引では、
契約締結前に『重要事項の説明』と契約締結後に『契約内容記載書面の交付』が
行われます。
前者の説明の場面で示される書類―『重要事項説明書』は、宅建業法35条に規定する書面のため
『35条書面』と呼ばれ、後者の書類は同法37条に規定する書面のため『37条書面』と呼ばれます。
それぞれ書面で記載する項目は異なりますが、37条書面の必ず記載する条項は次の通りとなります。
①当事者の氏名・住所
②物件の特定に必要な表示
③物件の引渡し時期
④移転登記申請時期
⑤代金等の額、支払時期、支払方法
尚、この必要的記載事項を記載した契約書であれば、それが37条書面として用いられます。
◆税務上の不動産譲渡損益の計上時期
ところで、税理士が税務判断の参考とする法人税・所得税の通達には、
不動産の譲渡の時期は、次のように記されています。
法人が不動産を『固定資産』として譲渡する場合には、不動産の譲渡日は原則として『引渡し日』
(土地等の引渡し日が明らかでないときは、①代金のおおむね50%を収受する日と
②所有権移転登記申請日のいずれか早い日)、特例として『契約効力発生の日』が採られます。
尚、宅建業者自身が不動産を『棚卸資産』として譲渡する場合には、大量に反復的に取引が行われることか
ら契約日発生基準を採用することはできず、引渡基準のみが適用されます。
個人の場合も、原則『引渡し日』、特例『契約効力発生日』ですが、法人のような『引渡し日』が明らかでない場合の
代金の50%収受日等を『引渡し日』とする規定はありません。
◆収益計上時期が判断しやすい契約書
ここで、宅建業者の方の作成する契約書ならば、必要的記載事項として、
これら通達で示された日が網羅的に示されていることが分かります。
実際の引渡し・代金支払状況によりますが、収益計上時期の判断がとてもやり易くなります。
親族間取引では、不動産取引に不慣れな方が契約書を作成する場面もあると思いますが、
参考としてはいかがでしょうか。
◆医療費の支払いが高額になった時
けがや病気で入院等をし、医療費の支払額が高額になった時、
自己負担が一定の額を超えた場合、申請により後から払い戻される制度が健康保険の
{高額療養費制度}です。
高額になる事が事前に分かる場合には「限度額適用認定証」を保険者に交付してもらい
医療機関に提示しておくこともできます。
その場合は支払い時に減免された額を支払うだけで一時的な大きな負担をしなくても済むようになっています。
◆払い戻しを受ける場合は
高額療養費を申請して払い戻してもらうには病院等の領収証も必要になりますが、
病院は保険者に提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経てから
支払いが行われるので診察月から3ヶ月以上はかかるのが普通です。
申請は全国社会保険協会や加入している健康保険組合です。
また、被保険者が同じ月に入院や通院があったり、複数の医療機関に受診したり、
被扶養者が医療機関に受診した時は自己負担限度額を世帯で合算する事が出来ます。
さらに高額医療費を受けた月が直近12カ月間に3回以上あった時は4回目から自己負担額が軽減されます(多数該当)。
◆平成27年1月から自己負担限度額改定
これまで70歳未満の被保険者に係る自己負担限度額は所得区分が3段階でした。
改正では上位区分が増え次のように5段階に区分されます。
①標準報酬月額83万円以上の人
252,600円+(医療費-842,000円)×1% (多数該当限度額140,100円)
②標準報酬月額53万円以上83万円未満
167,400円+(医療費-558,000円)×1% (多数該当限度額93,000円)
③標準報酬月額28万円以上53万円未満
80,100円+(医療費267,000円)×1% (多数該当限度額44,400円)
④標準報酬月額28万円未満の人
57,600円 (多数該当限度額44,400円)
⑤市町村民税が非課税の人
35,400円 (多数該当限度額24,600円)
今回は70歳以上の方の変更はありません。
子や孫などの直系卑属への贈与を非課税にする特例が、大幅に拡充される見通しです。
平成27年度税制改正大綱によると、マイホーム購入資金や教育資金に関する贈与を
一定まで非課税とする特例はそれぞれ期限が延長されます。
また、新たに、結婚・出産・育児に使う資金の贈与についても非課税特例が設けられます。
税制改正大綱では、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」として記されています。
信託などの機能を使って結婚や妊娠、出産、育児の費用を一括で子や孫に贈与した場合に
1千万円までを非課税にするもので、対象になる受贈者は、平成27年4月1日~31年3月31日に
贈与を受けた20歳以上50歳未満の人。
50歳になったときに使い残しがある場合はその部分に贈与税が掛かります。
非課税額1千万円のうち、結婚に関するものについては300万円が上限です。
政府には、高齢者が抱える資産を若年層に移動させて、
経済的な理由から結婚・出産をためらう若年層を支援したい狙いがあるそうです。
また、消費を後押しすることも狙いのひとつです。
1650兆円に及ぶ個人金融資産の6割は、65歳以上の高齢者世帯が保有しているといわれますが、
なかなか市場に出回らない〝眠っている個人資産〟を若年層に移転させ、
お金を使ってもらうこと自体が制度創設の目的でもあるわけです。
平成25年の被相続人数(死亡者数)は126万8436人で、このうち相続税の課税対象となったのは5万4421人でした。
課税割合は4.3%。前年から0.1ポイント上がっています。
相続税の納税者である相続人の数は13万545人でした。
国税庁が公表した資料で明らかになったものです。
相続税の課税価格は全体で11兆6253億円。
この課税価格とは、相続財産価額から被相続人の債務・葬式費用を控除し、
相続開始前3年以内の被相続人から相続人への生前贈与財産価額と、
相続時精算課税適用財産価額を加えた額を指します。
そして税額は、全体で1兆5367億円でした。
被相続人1人あたりでは、課税価格の平均は2億1362万円、税額は2824万円でした。
相続税は平成27年に最高税率が引き上げられ、一方で基礎控除額が引き下げられました。
基礎控除額は定額部分が3千万円、比例部分が600万円×相続人の数であるため、
課税ラインは「財産3600万円」です。
このことで課税対象者が増えるのは間違いなく、その数は5割増しになるとも言われています。
今回のデータを単純計算で1.5倍にすれば、課税対象となる被相続人数
(納税額が発生する相続税の申告書に掛かる人数)は8万2千人、
納税が求められる相続人は19万6千人に増えることになります。
「相続申告20万人時代」が目前に迫っているといえるかもしれません。
◆扶養控除の適用要件
扶養控除の適用要件は、
①配偶者を除く年齢16歳以上の親族(法令の規定に基づく児童等も含む)、
②親族の年間の合計所得金額38万円以下、そして、
③納税者と同じ家計で生活する、の3つです。
この3つの要件ですが、納税者の自己申告であり、適用にあたっては、特にその事実を証明すべき書類、
例えば、親族であることを証明する戸籍謄本等、所得を証明する源泉徴収票等、
そして、同居以外の場合、同一家計での生活を証明するための、送金の事実を証明する書類等の提出は不要となっています。
◆国外居住者の扶養親族
扶養控除の適用可否について、対象となる親族が国内に居住していれば、
上記の3要件を確認することはそう難しくありませんが、対象親族が国外に居住しているとなると、
その確認は容易ではありません。
要件の1つである、合計所得金額38万円以下の判定に関しては、その親族が我が国で得た所得、
すなわち国内源泉所得だけで判定しますので、その把握はそう困難ではありません。
しかし、親族の証明、親族への生活費の送金事実の証明となるとなかなか厄介です。
国際結婚で国外に親族がいるようになった場合、我が国のように戸籍制度が確立していれば、
親族であることを証明すべき公文書のような書類の提出を求めることもできますが、
制度が整備されていないとすると、その信用性が担保できません。
また、同じ家計で生活していることの証明ですが、生活費の海外送金などの明細書等があれば問題ないのですが、
現地で直接現金で渡した場合などは、その事実を客観的に証明することは困難です。
◆平成27年度の税制改正の行方
外国人と結婚した日本人や海外に親族を残して日本で働く外国人の扶養控除の実態を会計検査院が調査したところ、
不確かな状況で扶養控除を受けている事実が散見され、中には扶養控除額だけで300万円超受けていた人は140人もいたことが明らかになり、
新聞報道でも話題になりました。
そこで、財務省は、平成27年度の税制改正で、その適用を厳格化すべき方針を固めたようです。
その内容ですが、親族が確認できる書類や送金明細書の添付の義務化等が挙げられています。
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