◆マイナンバーへの国家総動員態勢
10月からのマイナンバー配布に向けて、マイナンバーの周知化情報が溢れ出しました。
ネット世界には「マイナンバーの受け取りを拒否しよう」などという書き込みもありますが、
マスコミや実業社会、マイナンバーに直接関わる税理士・社労士などの世界では、
素直に受け容れることを前提にした情報しか存在しません。
疑問を呈することを排除する同質化社会がここにも現れている印象を受けます。
◆マイナンバー漏洩対策は可能か
税理士とその顧客の大半にとっては、独自にマイナンバー漏洩対策を行うことは出来ないと思われます。
ベネッセの顧客情報漏洩事件2070万件というような大量の情報を抱えていないので、
情報窃盗の対象にならないだろう、と判断されるものの、クラウドサービスとして
給与計算情報をバックアップしているところからの流出は十分考えられます。
流出ルートが不明なまま、流出の事実だけが発覚した場合、漏洩対策不全は、
刑事罰や損害賠償のリスクを生み出します。
◆税と社会保険料徴収事務をやめる
漏洩リスクから解放されるようにするには、漏洩リスク対策を完全に実施でき、
損害賠償にも備えられる、
超大手企業に、給与計算事務等や社会保険事務を全面委託してしまうのが、最善の策です。
そして、そのような超大手企業が出現してくるかもしれません。
本当は、民間企業に無償で押し付けている源泉徴収事務や社会保険料徴収事務を廃止して、
国家や自治体が直接行ってくれるのがベストです。
◆ベターな策としての情報不取得
マイナンバー情報を得て、使用した後に直ちにその情報を削除して不保持にする、
のは煩雑で、ほとんど実行不可能です。
そもそも、マイナンバー情報を得なかったら、何か困るのでしょうか。
給与支払や年末調整に差し障りがあるのでしょうか、税理士個人のマイナンバーを知らないまま
顧問料の支払が出来ないなんてことになるのでしょうか、
マイナンバーを書かなかったら、健康保険証を発行してくれないのでしょうか、
多分何も困ることにはならないと思われます。
マイナンバーが本人確認手続を簡略にする利便性を提供するだけだとしたら、
その利便性の享受の放棄で済むことです。
安倍首相は成長戦略の一つとして、「女性の社会進出を促す」とウィメノミクスを掲げています。
そのなか、ここ数年で、女性の働きかたの一つとして、「サロネーゼ」が注目を集めています。
サロネーゼとは、自宅でサロン(教室)を主催する女性をいい、教室の種類は料理や手芸、
フラワーアレンジメント、美容と多岐にわたります。
サロネーゼは知り合いの主婦を生徒に教室を開いているケースが多くを占めますが、
なかには予約が8年待ちという繁盛している教室もあります。
人気のサロネーゼの一つを例に紹介すると、ここでは収納と掃除のコツを教えています。
基本コースでは、玄関収納、掃除の基本、書類整理法といったテーマごとにレッスンを繰り広げます。
期間は約1年、10回のレッスンがあります。
このサロンではその日の話が終わると、最後にサロネーゼ自らがこしらえたランチをふるまいます。
これもテーブルの装いを学ぶレッスンの一環ですが、和気あいあいと歓談を楽しむ時間があるのも特徴です。
こうした「おもてなし」による、生徒の満足度を高める工夫も人気の要因になっています。
ただし、最近では、サロネーゼが雑誌などで取り上げられたこともあり、競争が激しくなっています。
教室は自宅で簡単にできることや、テーマは家事や美容などと身近なものをとりあげるため、
比較的だれでも参入できます。
また、生徒の満足度を上げるための「おもてなし」がコストを増して、利益を圧迫する要因にもなっています。
サロネーゼとして生活できるほどの収入を得ているのは、100人中5人程度といわれています。
サロネーゼとして生き残るには激しい競争がありますが、なぜ今、サロネーゼが注目されているのでしょうか。
なにより、自分の好きなことや特技を活かし、自分らしい働き方ができる点が、女性にとっての魅力だといわれています。
加え、サロネーゼという働き方は、家庭と仕事を両立に適していることも大きなメリットとして挙げられます。
とくに、女性のなかには、家庭と仕事とのバランスを図るため、子育てをしながら外で働くのは難しいと考える人が少なくありません。
とはいえ、ずっと家にいるのでは、社会との接点が薄れてしまうのではないかと不安に思う人もいます。
その点、サロネーゼは自宅で子育てや家事の空いた時間を利用して働くことができるため、
働くスタイルの選択肢を増やすという意味でも有効です。
こうした、サロネーゼの人気に目を付け、タイアップを実現した企業もあります。
キッチンメーカーのクリナップは、日本全国にあるサロンについて、情報を発信する、
サロネーゼ検索サイトをオープンしました。
さらには、日本橋三越本店の「はじまりのカフェ」に、同社の最新システムキッチンを出展し、
そこで人気サロネーゼによる講座を開催しました。
ほかには、サロネーゼや化粧品メーカーと共同でコスメを開発し、好評だといいます。
現在、日本では、女性の力を活用することが国策として掲げられています。
そのなかで、女性管理職を増やすといったことが一つとしてあります。
それとは別に、企業としては、こうした、自宅で働く女性とタイアップすることが新しい活用の形として有効だといえます。
◆ピケティの提唱
ピケティの「21世紀の資本」は世界中で爆発的な売れ行きを示しています。
ピケティは、資産格差を拡大させないよう、累進的なグローバル資産課税を提唱しています。
個々人が持つ資産を全世界的に把握し、資産総額に応じて課税したうえで、
税収を関係国間で配分するというものです。
◆資産課税への日本の制度化準備
わが国でも、資産総額への課税制度創設の準備は進んでいます。
今年の税制改正事項として、従来の「財産債務明細書」を改変し、
国外国内を問わないもので、且つ「国外財産調書」と同じように運営する
「財産債務調書」制度が創設されます。
懲役刑を含む罰則をもつ「国外財産調書」制度の施行に引きずられての見直しのようにも見えます。
◆罰則ナシでスタート
「財産債務調書」の新制度には、懲役刑を含むような罰則は設けられないようです。
提出を義務付けられる人のプライバシーの開示を強制するに等しい、
財産と債務のオープン化は、100%完璧な申告も限りなく不可能であろうし、
心理的には相当な抵抗が予想されるところだから、と思われます。
罰則がなくてもまともな申告が期待できるものでしょうか。
現行の「財産債務明細書」については、罰則がないため、提出義務があっても提出しない人が沢山おり、
提出はするが形ばかりというものでも、これへの問合せは皆無です。
◆まずはスタートで少しのフォロー
従来と違うのは、「財産債務調書」の信憑性を担保するための税務調査の制度を設ける、
としているところです。
相続財産の事前調査のようになりそうです。
調査非協力には罰則があります。
でも、調査官が職権により「国外財産調書」や「財産債務調書」の書き換えをする職権更正というのはなさそうです。
◆そしてマイナンバーが来年から
財産申告と施行間近なマイナンバー制度をかけあわせると、当面の狙いは、
相続財産の捕捉もれへの対処であるとしても、その先に資産課税としての「富裕税」を見据えている、
ことが透けてきます。
富裕税は、日本でも、戦後3年間実施されていましたが、フランスには今でもあります。
財産申告が富裕税の税額計算申告になるまでは、財産適正申告の実現は相当な困難事のように思えます。
◆税制改正大綱のプラン
税制改正大綱では、国税通則法を改正し、銀行等に対し、マイナンバーによって
検索できる状態で預貯金情報を管理する義務を課す、としていました。
しかし、グリーンカードでの預貯金管理を狙った1980年代での付番はマル優(少額貯蓄非課税制度)口座
重複開設への対策だったものの、現在はマル優預貯金は障害者などに限定適用なので無きに等しく、
むしろ「貯蓄から投資」へと政策が変更し、投資マル優とも言うべきNISA(少額投資非課税制度)を
推進しているので、預貯金への付番の必要性は低下しています。
◆預貯金へのマイナンバー付番はなし
国税通則法のみ、先の税制改正大綱通りの改正案になっていますが、マイナンバー法の改正での
預貯金口座付番のほうは、大義が預貯金保険であり、その緊急的必要性が希薄なため、
強制付番ではなく、任意付番になりました。
預貯金については、口座数の大量性から全てへのマイナンバー付番は無理としても、
新規のものについては義務化するのでは、と推測する向きもありましたが、結果として、平成27年改正では見送られました。
預貯金口座への個人番号の付番を行う場合には、預貯金等へ損益通算範囲拡大の適用条件として
マイナンバー付番口座限定にするものと推測されます。
◆ジュニアNISAには即付番
平成27年度税制改正により、平成28年4月1日から、ジュニアNISAが導入されることになりましたが、
口座重複開設防止の必要性から、マイナンバー付番が義務付けられています。
証券会社等の営業所長に、未成年者口座開設届出書に添付して提出する未成年者非課税適用確認書に
マイナンバー等を記載することになっています。
◆NISAへの付番は遠からず
成人NISAに対するマイナンバー付番については、口座重複開設防止の必要性をマイナンバーで
確保するには既に時機を失しているので、今年は先送りされました。
しかし、法適用上の次の区切りとなる期間開始の平成30年分以後からのマイナンバー付番については、
その効果があるので、義務付けられることになるのではないか、と予想されます。
◆社会保障と税の共通番号開始は16年1月
マイナンバー制度は既に2010年当時の民主党政権時代に税制改正大綱に明記されていました。
自民党政権の13年5月に法案が通り来年開始の予定になっています。
住民票を有する全ての人(日本国民と日本に住所を有する外国人)に対して12ケタの番号を割り当て、
社会保障、税、災害対策の分野で氏名、住所、生年月日、所得、税金、年金等の
複数の行政機関に存在する個人情報を紐付け各機関で情報連携を可能にする、
番号一元管理を目指しています。
◆具体的な使われ方
1.社会保障(年金・労働・医療・福祉) 年金の保険料徴収、資格取得、
確認、給付、雇用保険の資格取得、確認、給付、職安の事務、医療分野の保険料徴収、
給付、福祉分野の給付、生活保護、介護保険、児童手当等
2.税
確定申告書の提出、届出書、納付書への記載、税務署の税務事務、
勤務先での源泉徴収票(従業員、扶養家族)
3.災害対策
被災者台帳作成事務と支援金
◆マイナンバー導入の理由 政府発表
1.所得と行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため不当に負担を免れたり、
給付を不正に受け取る事等は減り、本当に必要な人に支援を回す。
2.国民の行政手続きが簡素化され負担が減る。
行政機関のつながりができるので証明書の交付、確認が簡単になる。
また、自分の個人情報の確認や行政からのお知らせも受け取り易くなる。
3.行政機関側で様々な情報の照合、転記、入力等作業に要する時間が減り、
コスト削減と事務効率が向上する。
◆漠然とした不安
メリットだけでなく懸念材料も認識しておく事は大事でしょう。
・個人情報を集約した情報の外部流出
・個人番号の不正利用、なりすまし等
・一元管理が進むことで人権やプライバシーの面等
国はセキュリティーに関し手立て案を発表していますが、他国でも漏えい、
なりすまし等問題となっているケースもあるようです。
今後利用範囲を民間にまで広げる方向性を示していますので国民にとっての利便性とは
何かを考える必要はあるでしょう。
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