平成26年度の税制改正大綱には、消費税の簡易課税制度の見直しや
給与所得控除の引き下げ、大企業の交際費の損金算入の導入などが盛り込まれています。
ここでは、ゴルフ会員権とリゾート会員権の売却に関する改正を見てみましょう。
ゴルフ会員権とリゾート会員権はこれまで、所得控除の対象でした。
会員権を売却して発生した損失をその年の所得から差し引けたのです。
しかし、税制改正大綱では、これがNGとなることが示されました。
「生活に必要とされる資産」を売却した場合に損失が発生すると、
その年の所得から控除して所得税を計算することができます。
大綱では、「生活に通常必要ない資産」としてゴルフ会員権とリゾート会員権が加わった形です。
平成26年4月から、売却して損失が出た場合に損益通算できなくなります。
例えば課税所得が800万円の場合、「800万円×23%(税率)-63万6300円(控除額)」で、
120万3700円。
損益通算で会員権を500万円で売却すると、「(800万円-500万円)×10%-9万7500円」で20万2500円。
なお、税額、控除額は所得に応じて決まっています。
損益通算ができるのとできないのとでは大きな違いが生じてきます。
会員権の売却を考えている人は早めに決断した方がいいかもしれません。
◆公務災害の遺族補償年金、夫の請求が通る
最近のニュースで、大阪地裁で遺族補償年金支給年齢に男女差を設けることを
違憲とした事例がありました。
遺族補償年金は夫が死亡した場合妻には年齢に関係なく支給されますが、
妻が死亡した時は死亡当時夫が55歳以上且つ、夫が60歳になってからしか支給されません。
この事例では地方公務員であった妻が職務上のストレスから自殺し、
夫が労災申請をしていました。ところが妻の死亡当時夫が51歳であった為、
遺族補償年金は不支給とされてしまいました。
夫はこの処分の取り消しを求めて訴訟を起こし、
裁判所側は夫の言い分を認める判決を出しました。
◆女性の社会進出、共働きの増加
地方公務員災害補償法の施行された1967年頃は夫が外で働き、
妻は家事に専念すると言う世帯が一般的でしたが1986年の男女雇用機会均等法施行以来、
女性の社会進出も増加、2010年時点では専業主婦世帯797万に対し、
共働き世帯1012万世帯と大きく増え近年では妻が家計を支えて夫が専業主夫の場合も多々あります。
労災補償に限らず、厚生年金保険や共済組合の遺族年金も妻の死亡時夫が55歳以上、
受給は60歳からとなっています。
年金財源の問題もあるのですぐに他の遺族年金制度に波及するのかは判りませんが
今後見直しの動きがあるかもしれません。
◆父子家庭の遺族基礎年金の支給
労災補償でない年金では2014年4月から父子家庭にも遺族基礎年金が支給されます。
現行の仕組みでは夫が死亡して遺族が妻と子の場合、妻は子が18歳になった年度末まで
遺族基礎年金を受給する事が出来ます。
しかし妻が死亡しても夫と子は遺族基礎年金を受給する事はできません。
一般的には父子家庭より母子家庭の方が生活の困窮度が高いからという事でしょう。
しかし父子家庭であっても生活に困っている家庭も多いという状況から、
妻が亡くなり夫と18歳の年度末までの子の場合は年1,012,800円が支給されるようになります。
また、夫の被扶養配偶者である妻(第3号被保険者)が死亡した場合は夫には遺族基礎年金は支給されません。
残された家族が困窮しないように支給するという性格の為、
共働き又は妻が収入の担い手であった専業主夫の場合は支給されます。
「キャッシュフロー経営」という言葉をよく聞きます。
「キャッシュフロー」という言葉が日本で流行り出したのは、
2000年に行われた会計の大改正のときに上場企業の財務諸表に
「キャッシュフロー計算書」が導入されたことによります。
しかし、そのときまで、日本の経営にキャッシュフローという考え方がなかったのかというと、
そんなことはありません。
それまでは、「資金繰り」とか「資金運用」という言葉で表現されていました。
「黒字倒産」とか「利益合って銭足らず」というような言葉に象徴されるように
経営の生殺与奪の権利はキャッシュが握っていることは以前から常識でした。
どんなに利益が出ていても、手元資金がなくては債権者にカネを支払らえず倒産してしまいますし、
いくら貸借対照表に自己資本が積み上がっていても、
資金がなければ設備投資はできません。
このようにキャッシュの重要性は十分認識されていました。
ただ、正式な財務諸表書類として「キャッシュフロー計算書」が登場したことで、
その重要性が再認識されたわけです。
そこでキャッシュフロー経営の登場になるのですが、
キャッシュフローを増やすにはどうしたらいいのかが経営に問われます。
キャッシュフローを増やすための第一の方策はいうまでもなく、利益の向上です。
それは当然のことですが、利益の向上は経営そのものの課題でありキャッシュフロー経営とは
発想の次元が異なります。
キャッシュフロー経営とはキャッシュそのものに注目するものなのです。
事業を行えば、在庫や受取手形、売掛金などの事業性資産が発生します。
こうした事業性資産は正常なものである限り、いずれキャッシュになりますが、
キャッシュになるのを自然体で待っていてはいけません。
キャッシュ化を促進する努力が求められます。
キャッシュ化の進展速度を測る最適な指標が、事業性資産を月商で割った回転期間です。
回転期間を短期化することが重要です。
在庫であれば売れ筋を的確に把握し、デッドストックを排除しなければなりません。
売掛金であれば得意先に早期資金化を促すことはもとより、顧客の選別も必要になるでしょう。
事業性資産の回転期間の短縮には顧客の状況とニーズを正確につかむことが求められます。
顧客にどれだけ近づけるかが勝負です。
納税も重要なキャッシュアウトです。
含み損を抱えながら納税するのは無駄です。
含み損は税務上損金算入が認められる実現損に変える必要があります。
デッドストックや不良債権は早期に処理し、損失を実現します。
事業に使わない土地などの遊休不動産も売却します。
含み損のある遊休不動産を売却すれば、売却代金が入金することに加え、
所得が減少し納税資金も圧縮できますから、キャッシュフロー的には一石二鳥です。
資金が足りなくなる場合には銀行に融資申し込みをします。
そのときに、経営者がキャッシュフローの実態を正しく知っていることが必要です。
銀行にしても事業拡大には熱心だが、自社のキャッシュフローの実情を知らない経営者では不安です。
キャッシュフローは非常に重要ですので、担当者任せにすることなく経営者自らが正確につかんでいなければなりません。
みずほ総合研究所は「消費税率引上げに伴う家計負担」と題したレポートを公表しました。
それによりますと、年収階層別の消費税負担額を試算した結果、
低所得者ほど税負担率が上昇することが明らかになりました。
試算は、総務省「家計調査(2012年)」のデータを元に、年収階層ごとの
1ヵ月平均支出総額から家賃などの非課税品目を控除した金額に消費税率を乗じて、
消費税負担額を算出したものです。
年間消費額(税抜)が変わらないという前提で、税率が8%に引き上げられた場合、
消費税負担額は年収300万円世帯で同15万3,411円、年収1,000万円以上世帯で同37万9,059円と試算されます。
さらに、税率が10%に引き上げられた場合の消費税負担額は、
年収300万円世帯で平均19万1,764円、年収1,000万円以上世帯で同47万3,823円と試算されます。
以上のように、年収が多いほど消費水準も高いため、金額ベースでみた消費税負担は、
高収入世帯ほど大きいとしています。
しかし、年収に対する負担率で比較しますと、現行税率5%の場合でも年収300万円未満世帯で4.1%、
年収1,000万円以上世帯で1.7%と、低所得世帯の負担が重くなります。
その負担率の差は2.4%ですが、税率が8%に引き上げられると、
負担率はそれぞれ6.5%、2.7%に上昇し、負担率の差は3.8%に拡大します。
そして、税率が10%に引き上げられると、負担率はそれぞれ8.1%、3.4%まで上がり、
負担率の差はさらに4.7%まで開くと計算しております。
2014年度は、消費税率引上げにより全ての年収階層で大幅な負担増となります。
同レポートでは、日本の財政事情を踏まえれば、今後も徐々に家計負担を高めていく方向性自体は変えられず、
2015年10月には10%への消費税率引上げが予定されますが、2014年4月の税率引上げ後の経済情勢を踏まえ、
税率引上げ幅・時期が適切か、低所得者や年金受給世帯への配慮は十分かといった観点も含め、
改めて慎重な検討が求められると締めております。
◆贈与税の二つの方式の適用状況
贈与税には、相続時精算課税方式と暦年課税方式の二つがあります。
直近の国税庁の公表によると、暦年課税適用者は39.1万人、相続時精算課税適用者は4.6万人です。
ここ10年ぐらいを概観すると、暦年贈与は平成20年を谷底(27.3万人)とした形で、
最近5年は一貫して増加しています。
それに対して、相続時精算課税は平成15年の制度創設時の7.8%から数年8%前後で推移し
平成19年(8.9万人)を頂点とし、なだらかな山型でそれ以後一貫して減り続けています。
◆相続税がバクチを取り込む
相続時精算課税は、当初は期待を込めて適用する人がそれなりにおりましたが、
受贈財産である不動産や株式が相続時に大幅な値下がりをしていても、
逆に、大幅に値上がりしていても、相続財産として合算される金額は贈与時の時価となることになっており、
相続税にこのようなバクチ的要素が持ち込まれていることに、リスクを察知しているからではないかと、思われます。
◆孫への制度拡張が起死回生策となるか
平成27年以後の贈与から、相続時精算課税制度の適用対象が孫にまで拡大されることになりましたので、
その年からは選択適用者数の減少が増加に転ずると期待されているのでしょうが、
多分、期待に反して減少傾向に歯止めがかからないことになるのではないかと推測されます。
◆相続時精算課税が今後とも不人気の理由
平成27年以後の相続税の基礎控除40%カットによって、相続時精算課税制度の絶対的適用有利者である、
相続税のかからない層に属する人数が圧縮されます。
また、平成27年以後の相続税の高額納税者への税率アップで、最高税率に近い人ほど、
相続時の追加納税が大きくなるので、相続時精算課税制度を敬遠することになると思われます。
それに孫は1親等の血族ではないため、相続税の2割加算の対象者となり、
事前に20%で納付していた贈与税と、55%×1.2=66%となる相続税額との差額を追加納税する必要となる場合があり、
有利選択とはなりにくいです。
逆に、平成27年以後の贈与税では、20歳以上の孫ならば、暦年贈与の税率が緩和されるので、それを利用して、中長期にわたる贈与を実行していくほうが、有利選択になると思われます。
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