相続税の増税に備えた対策の一環として、金融緩和の継続と相まって、
借入金による中古賃貸不動産の建替えも盛んのようです。
これら賃貸に供されている建物の建替えに伴う「取壊し等」により生じた損失、
いわゆる資産損失については、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されます。
取壊し等には、除却、滅失等も含まれます。
◆資産損失の金額の計算
必要経費に算入される資産損失の金額は、その資産の原価ベースによる価額、
いわゆる簿価を基礎として計算することとされており、建物については、
損失の生じた日にその資産の譲渡があったものとみなして、その固定資産の取得に要した金額及び設備費
並びに改良費の額の合計額からその資産の償却費の額の累計額を控除した金額です。
◆貸付規模と資産損失の必要経費
不動産所得の起因となる建物の取壊し等による資産損失が全額必要経費に算入されるかどうかは、
取壊し時の不動産の貸付が事業的規模か、それ以外(業務的規模)か、どうかによって異なってきます。
事業的規模の場合には、その資産損失の全額を必要経費に算入することができ、
不動産所得が赤字の場合は他の所得との損益通算、さらに、青色申告であれば純損失の繰越控除の適用があります。
一方、業務的規模の場合には、その年分の不動産所得(その資産損失を控除する前)の金額が限度になり、
不動産所得が赤字であれば、その部分の金額は切り捨てられることになります。
なお、事業的規模かどうかは、
①アパート等については、独立した室数10以上、
②独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であれば、反証がない限り事業的規模とされ、
また、事業税が課税されていれば事業的規模として取り扱われています。
◆取壊し費用と必要経費
建物の取壊しには、当然、取壊しのための諸費用がかかります。
この取壊し費用も取壊しによって生じる損失、除却損と同様、
不動産の貸付規模によって必要経費に算入される金額の範囲が異なるかどうかです。
資産損失は、あくまで資産の取壊し、除却、滅失による資産そのものの損失、
原則、未償却残高相当額であることから、取壊し費用はその範疇には入りません。
したがって、不動産の貸付の規模にかかわらず、業務供用部分については、全額必要経費に算入されます。
◆H27年以後の贈与の相続時精算課税の改正
平成26年も終盤にさし掛かり、来年(平成27年)から贈与税の税率改正があることを
お聞き及びの方の中には、親族間の資産移転を今年にするか、来年にするかお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
今回のコラムでは、来年(平成27年)以降の贈与から適用される相続時精算課税制度の改正点について確認していきます。
◆いままでの相続時精算課税制度
相続時精算課税の適用対象者は、超過累進税率が適用される暦年課税方式の贈与税にかえて、
一律20%の税率と特別控除2,500万円がある相続時精算課税制度の適用を受けることができます。
この制度の適用を受けることができる受贈者・贈与者の要件は次のとおりです。
(1)受贈者の要件
贈与者の推定相続人(直系卑属に限る)のうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者であること
(2)贈与者の要件
贈与をした年の1月1日において65歳以上である者であること
また、相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、贈与を受けた財産に係る
贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」を納税地の所轄税務署長まで提出しなければなりません。
◆H27年以後の贈与の精算課税制度
この受贈者・贈与者の要件が平成27年1月1日以後の贈与から、次のとおり適用範囲が拡充されることになりました。
(1)受贈者の要件
贈与者の孫は、改正前は子の代襲相続人として贈与者の推定相続人になったケースでのみが
精算課税の適用対象でしたが、改正後は、その年の1月1日において20歳以上である「孫」であれば、
精算課税の適用を受けることができるようになりました。
(2)贈与者の要件
改正前の「65歳」の年齢要件が「60歳」に引き下げられました。
この改正により、平成27年からは60歳を迎えたばかりの祖父母が、
20歳以上の子・孫の両者に相続時精算課税を適用することができることとなります。
具体的には、平成27年以後であれば、昭和30年1月2日以前に生また祖父母が、
平成7年1月2日以前に生まれ孫に贈与するケースでも、この制度の適用を受けることができます。
◆話題商品の転売問題
iPhone6が発売されるや否や、一定の顧客による大量購入が問題視されニュースを賑わせています。
その少し前には、今子どもたちの間でゲームやアニメが大人気になっている
「妖怪ウォッチ」の特典付映画前売券やグッズが、大人たちに買い占められ、
子どもたちとその保護者から悲しい声が寄せられていると話題になりました。
こうした買い占めの動機のほとんどは、インターネットオークション等での転売目的とされています。
副業感覚で気軽に手を出される方も多いようですが、このような転売行為に問題はないのでしょうか?
◆商品の転売と古物営業法
中古品の買い取り販売等、古物営業法に規定される古物を、
業として売買または交換する業者を「古物商」と言い、この言葉で多くの方々がリサイクルショップや
金券ショップを連想されることと思います。
しかし、この法律に規定される「古物」には、一般的な認識よりかなり広範囲な意味があり、
いわゆる「新古品」についても「古物」であるとされます。
つまり、販売目的で一度市場に流通した商品はすでに「古物」に含まれるのです。
この規定は元々、盗品の売買を防止するために設けられたものではありますが、
この「古物」の定義に当てはめれば、今回のようなiPhone6や妖怪ウォッチの新古品転売も
厳密に言えば古物商営業であり、公安委員会から許可を受けなければならない営業行為になります。
◆都道府県迷惑防止条例違反の可能性も
また、違反行為となり得るのは古物営業法の規定だけではありません。
不特定多数の人に転売目的でチケットを大量購入し、転売することは、
ダフ屋行為として各都道府県の迷惑防止条例違反になります。
転売だけでなく、転売目的で購入することそのものもダフ屋行為とみなされます。
以上のように、転売目的での購入はユーザー同士のマナー違反であることはもちろん、
法律や条例においても重大な違反行為です。
インターネットが普及し、個人間での売買は非常に容易なものになりましたが、
ルールを守った姿勢と行動を心がけたいものです。
生まれ故郷や応援する自治体に寄付をすることで、自分の住む自治体で所得税や
個人住民税の税額控除を受けられる「ふるさと納税制度」の「お礼」合戦が過熱しています。
この制度は納税者が思い入れのある自治体に寄付の形で貢献でき、その結果、
地方間の税収格差が是正できるとしてスタートしました。
寄付をしてくれた人に特産品など「お礼」を贈る自治体が多いことから、納税者の間で認知度が高まっています。
こうした状況下で京都・宮津市は、ふるさと納税制度を利用して1千万円以上寄付した人に対して、
日本三景の一つである天橋立を臨む住宅分譲地を無償譲渡する制度を設けました。
しかし、総務省から「土地の譲渡は『特別の利益』に当たり、寄付者が税控除を受けられない可能性がある」
と指摘を受けたため、その制度の中止を9月下旬に発表しました。
市は、ふるさと納税制度を利用して1千万円以上の寄付をした人に750万円相当の住宅分譲地を
「お礼」としてプレゼントするサービスを始めようとしていたのですが、
所得税法では「寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの」については
寄付金としての税控除を受けられないと定められていて、「土地」は高額での換金が可能であることから
特典の範囲を逸脱するかもしれないとの指摘を受けました。
一定額以上の寄付に応じてその土地の特産品を贈ることにしている自治体は多く、
その種類は肉や米などの食材からイベントチケットや温泉旅館の優待券まで多岐にわたります。
利用者が増えるにつれて特典も高額化の傾向にあります。
300万円以上の寄付を対象にブランド牛1頭分の牛肉をプレゼントする自治体も登場しました。
これによって「持つ地方」と「持たざる地方」の新たな税収格差が生まれる可能性も否定できません。
特典について総務省に名指しで指摘を受けたのは今回の宮津市が初めてですが、
自治体による「お礼」合戦の過熱化を懸念する声は各所から挙がっています。
経済産業省が9月12日に公表した消費税の転嫁状況に関す調査結果によると、
調査時点(8月15日~26日)で、事業者間取り引きに関して増税分全ての転嫁はできていない
事業者が約2割でした。
調査には9644社が回答を寄せました。
事業者間取り引き(BtoB)では、「全て転嫁できている」と回答したのは83.3%の事業者。
前月調査の結果と比較して0.1ポイントとわずかではあるものの悪化しました。
増税から5ヶ月弱経った段階で、2割近くの事業者が増税分の全ては転嫁できていないことが分かります。
「一部を転嫁できている」9.8%、「全く転嫁できていない」3.8%などでした。
全て転嫁できた理由は、「以前より消費税の転嫁への理解が定着しているため」が圧倒的に多く、
「本体価格と消費税額を分けることで交渉しやすくなったため」が続きます。
反対に、転嫁できない理由としては、「競争が激しく価格引き上げで他社に取引を奪われるおそれがあるため」
「取引先の業界の景気が悪く値上げを受け入れる余裕がなかったため」
「取引先との力関係で立場が弱かったため」が続きました。
下請け事業者の苦悩がうかがえます。
一方、消費者向け取り引き(BtoC)では、「全て転嫁できている」のは73.8%。
「一部を転嫁できている」15.7%、「全く転嫁できていない」4.7%などでした。
全て転嫁できた理由は、「消費者の消費税率引上げの意義等に対する理解が浸透したため」
「本体価格と消費税額を分けることで値上げへの反発が和らいだため」などが挙げられています。
転嫁できない理由では、「景気が回復しておらず消費者の財布のひもが固いため」
「競争が激しく価格引き上げで他社商品に乗り換えられてしまうおそれがあるため」が他を圧倒する回答率でした。
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