◆芥川賞の賞金品は所得税の課税対象?
第153回芥川賞は、お笑い芸人の又吉直樹さんが受賞して話題になりました。
同賞の正賞は懐中時計、副賞は100万円だそうです。
これらの賞金品については、特に非課税として所得税法に特掲されていないため、
所得税が課せられることになります。
この場合、受賞の経緯が、既に公表された候補作品の中から選考委員(第三者)により
選ばれるものであることから、「著作の対価」としての性質は有していない
―すなわち、源泉徴収の対象(原稿報酬)とはならないものと位置づけられています。
◆では「事業所得」か「一時所得」か?
では、「事業所得」か「一時所得」のどちらに該当するかといえば、少々判断が難しいところではあります。
所得の区分は、「継続性・対価性」があるもの、ないしは「付随収入」としての性質があれば「事業所得」、
そうでなければ「臨時的・一時的」な収入として「一時所得」となります。
ただ、この新人文学賞の受賞をきっかけに作家生活(事業)が軌道に乗る方も
いらっしゃることを考えると必ずしも「一時所得」とは言い切れない部分があることは否めません。
◆正面から聞いてみた作家さんがいました!
東京国税局から公表されている文書回答事例の中に「吉川英治文学新人賞の受賞に伴って
受領した副賞の取扱いについて」というものがあります。
これは平成10年から作家業を営んでいる方が同賞を受賞した際に受け取った副賞は
所得税法上「一時所得」に該当するものと解して差し支えないか、
国税局に直接文書で問い合わせたものです。
こちらの作家さんは、同賞は、
①財団法人が選ぶもので「出版社」が選ぶものではないこと、
②既存の作品の中から選考委員によって選ばれたもの(非公募型の新人文学賞)であって、
自らが応募するもの(公募型の新人文学賞)でないこと、
③芥川賞などが源泉徴収の対象でないように、「著作の対価」としての性質は有していないことから、
作家としての本来の事業活動による収入ではなく、文筆活動を行う中で一般的に受領し得る性質のものではない
―むしろ、予期せぬ臨時・偶発的収入だと主張したのです。
結果としては、国税サイドではこの作家さんの主張を認めております。
会社が従業員に給与や賞与を支払う際、給与等から源泉所得税を源泉徴収しますが、
源泉徴収する税額は、支払いの都度、「給与所得の源泉徴収税額表」を使って計算します。
この税額表には、「月額表」、「日額表」、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」
の3種類があります。
月額表には、給与の支払い形態によって甲欄、乙欄、丙欄(日額表のみ)を使用します。
「給与所得者の扶養控除等申告書」が提出されている場合には「甲欄」、
提出がない場合には「乙欄」で税額を求めます。
「丙欄」は、「日額表」だけにあり、日雇いの人や短期雇い入れるアルバイトなどに
一定の給与を支払う場合に使用します。
パートやアルバイトなど正社員以外の人に給与を支払う際に源泉徴収漏れが多く、
源泉徴収する税額は、一般の社員と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」の「月額表」
または「日額表」の「甲欄」または「乙欄」を使って求めます。
ただし、給与を勤務した日または時間によって計算していることのほか、
下記のいずれかの要件に当てはまる場合には、「日額表」の「丙欄」を使用します。
①雇用期間があらかじめ定められている場合には、2ヵ月以内であること
②日々雇い入れている場合には、継続して2ヵ月を超えて支払いをしないこと
つまり、パートやアルバイトに対して、日給や時間給で支払う給与は、
あらかじめ雇用契約の期間が2ヵ月以内と決められている場合には「日額表」の「丙欄」を使用します。
ただし、期間延長や再雇用によって2ヵ月を超えてしまう場合には「丙欄」を使うことはできませんので、
ご注意ください。
なお、日給が9,300円未満の日雇いや短期(2ヵ月以内)のアルバイト等のケース、
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していても、月給または日給が一定額未満の
アルバイト等のケースには、源泉徴収をする必要がありません。
上記の一定額未満とは、扶養親族が0人の場合は月給88,000円未満(日給では2,900円未満)
では源泉徴収をする必要がありません。
扶養親族の人数によって、一定額未満の数字は異なりますので、税額表をご確認ください。
教育資金の一括贈与非課税制度は、30歳未満の子や孫等が、教育資金に充てるため、
父母や祖父母など直系尊属から、金融機関の口座等の開設を通して、最大1,500万円
(うち学校等以外への支払いは500万円まで)贈与を受けても贈与税が非課税となる制度ですが、
このたび下記の追加がありました。
①教育資金の使途の範囲に、通学定期券代、留学渡航費、入学等の転居の交通費を追加
②金融機関へ提出する領収書等に記載された支払金額が1万円以下で、かつ、
その年中の合計支払金額が24万円までのものは、その領収書等に代えて、支払先、
支払金額等の明細を記載した書類を提出できる(2016年1月から適用)見直しを行い、
その適用期限が2019年3月31日まで延長
*通勤定期券代は、通常の通学に使用する定期券代、スクールバス代(通学定期券)が対象で、
購入した際の領収書、通学定期券の写しの2点を提出する必要があります。
*別の経路の切符代や交通系電子マネーのチャージ代、
自転車通学の際の自転車代や駐輪場代などは対象外となります。
*スクールバス代は、業者に通学定期代として支払う場合に認められます。
*回数券等は対象外ですが、学校に直接支払う場合は1,500万円の非課税枠の対象となります。
*留学渡航費については、1留学1往復(合理的経路)しか500万円の非課税枠を利用できず、
その証明書類は厳格化されております。
具体的には、
①領収書
②留学先の学校の入学許可証や在籍証明書などの就学証明書
③航空券の写し、e-チケット、搭乗証明、旅程等の渡航経路を確認する書類の全てを提出する必要があり、
上記3点が揃っていない渡航費や空港までの交通費は対象外となりますので、ご注意ください。
入学・転入学・編入学に当たっての転居に伴う1往復(合理的経路)の交通費も500万円の非課税枠の対象となります。
証明書類には、
①領収書
②入学する学校等の就学証明書
③乗車券の写しや購入履歴の印刷等移動の経路を証明する書類
④転居元の住所を証明する住民票等の4点全てが必要で、この4点が揃っていない交通費や、
親の転勤に伴う転校で転居する場合の交通費は認められませんので、あわせてご注意ください。
◆マイナンバー制度への対応
マイナンバーの個人番号は、今年10月より住民票の所在地に送付される
通知カードにより通知されます。
平成28年1月以降は希望すれば市区町村窓口で顔写真付き個人番号カードを申請することもできます。
会社は来年以降の社会保険事務や源泉徴収事務のため、
10月以降に個人のマイナンバーを収集し、その際通知カード+顔写真付き身分証明書の提出を以て
本人確認をする事となっています。
但し雇用関係があり本人に相違ない事が明らかな場合や個人番号カード提示時は
本人確認書類は不要です。
◆今後、会社が行う事
1.9月までに担当部署、担当者を決定する…マイナンバーの取り扱い部署、
担当者、責任者を決める(経理部や人事部等)
本社以外に支店等がある時は支店で収集窓口となる人も担当者となります。
担当者以外は取り扱いしないようにし、また、秘密保持誓約書を取る場合もあります。
2.取扱規定や就業規則を策定します。
3.安全管理措置を策定します。
4.社員説明会を開いたり、従業員にマイナンバー実施と収集の目的を示した
番号報告の依頼書を通知したりします。
扶養親族については年末に扶養控除等申告書に記載してもらう事で事務の簡素化になります。
扶養親族の本人確認は従業員自身にあります。
会社は国民年金第3号被保険者の手続き以外、扶養親族の本人確認は不要ですが、
会社からの委任状で番号を提出してもらう方法もあります。
5.10月以降マイナンバー収集の際は直接なら封筒に通知カードの写しを入れ、
通信で行う時はメール(パスワード設定)か簡易書留で行います。
マイナンバーを通知されたら授受の記録を残しておきましょう。
◆28年1月以降マイナンバーを記載する書類
雇用保険資格取得届・喪失届、継続給付請求、労災の給付申請、
退職者給与の源泉徴収票 年末調整事務等
◆29年1月以降の事務
社会保険の資格取得届・喪失届、育児休業関連、療養費、
傷病手当等の給付請求、氏名変更、住所変更等
税分野では平成28年分の税務申告や給与支払報告書、法定調書、支払調書等
マイナンバーを記載した書類は法定保存期限が過ぎたら確実な方法で廃棄をすることとなっています。
テレビ番組の制作や劇場運営などを手掛ける吉本興業が、資本金を125億円から1億円へ
減資するそうです。
「大企業」から「中小企業」になることで税法上の優遇措置を受ける狙いがあるようです。
同社は今年3月末時点で利益剰余金がマイナス140億円、税引前損益が29億円の赤字となるなど、
苦しい経営状態が続いていました。
資本金が1億円以下の企業は税法上、「中小企業」として扱われます。
法人税は本則25.5%ですが、中小企業には800万円以下の所得については
19%の軽減税率が認められており、現在はさらに租税特別措置法で15%の税率が
適用されています。
また業績にかかわらず従業員数や資本金に応じて課税される外形標準課税も、
中小企業は課税対象に含まれません。
そのほかにも欠損金の繰越控除制度や雇用促進税制など、
多くの税目で中小企業には優遇が用意されています。
そのため、今年5月には大手電機メーカーのシャープが99%の減資をして
資本金を1億円にする計画を進めていましたが、経産相が「税制優遇を利用するために
減資するというのは違和感がある」とコメントするなど批判が相次ぎ、
最終的に税法上の「大企業」として扱われる5億円への減資に落ち着いた経緯があります。
吉本興業は今回の減資について、「中長期的な視点で、資金を有効な投資に振り向けていくため」
として税優遇目当てとの見方を否定しました。
しかし、社会的に名前の知られた有名企業が中小企業税制の適用を受けることに対しては反発の声も上がっているようです。
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