国税庁によると、平成26事務年度の相続税の実地調査数は1万2406件で、
申告漏れなどの非違が発覚したのは1万151件だったそうです。
この1万件を超える申告漏れのなかから特徴のある3事例を紹介します。
税務署から「相続についてのお尋ね」と書かれた文書を受け取った相続人Aは、
「被相続人Bの財産額は基礎控除額以下である」と回答し、相続税の申告をしませんでした。
しかし税務署の調査の結果、AはBが体調を崩してから、Bのキャッシュカードを使用して、
預金口座から現金化していたことが判明しました。
ATMの1日の出金上限の50万円を、約200回にわたって引き出していたそうです。
次に、被相続人が生前、事業収入を継続的に複数の家族名義の預金口座に
こっそり入金していた事例があります。
口座残高は相続開始時点で5億円もあったそうです。
入金は被相続人Cがしていましたが、相続人Dたちはこの事実をCから聞いており、
さらに「私(C)が死んだら私名義の口座だけを申告して、家族名義の口座は申告しないように」
とも言われていたとのこと。
最後に、住宅を購入したEが、税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」
とする文書を送付されて嘘の回答をした事例。
Eは自分の手持ち現金と銀行からの借り入れで住宅を購入したと回答しましたが、
税務署は両親からの援助があったという疑いを持ちました。
あらためてEにたずねても援助の事実を否定。
しかし、銀行の住宅ローンの資金計画に両親からの資金贈与が組み込まれていたことや、
両親の預金口座からEの預金口座への入金時に同行して手続きしていたことが明らかになり、
贈与の事実が判明しました。
専門誌等では、あれやこれやの節税策が喧伝されています。
では、相続税の基礎控除4割カットがそれほど大きな負担に繋がるのでしょうか。
負担増にならないとは言いませんが、実際のところ、自宅(住居地にもよりますが)と
現預金2,000万円前後の遺産では、相続税の負担はせいぜい200万円前後です。
財産を貰っての負担ですから、決して払えない金額ではありません。
何か不安を煽っているようにも思われます。
ところで過日、国税庁は今後、専門家に頼らず相続人の自主申告が増えると予測してか、
誤りやすい事例を公表しました。
幾つか紹介をしてみたいと思います。
●被相続人の兄弟姉妹が相続人
相続税法では、相続・遺贈で財産を貰った人が一親等の血族及び配偶者以外であれば、
算出された税額に2割加算することになっています。
兄弟姉妹は二親等の血族ですから、2割加算の対象になるというものです。
また、孫が相続した場合、その孫が代襲相続人でない場合には、2割加算の対象になることも事例として掲げています。
●お墓の購入費用に係る借入金
事例の内容は、被相続人が借金して350万円のお墓を購入、相続開始時には220万円の残債があり、
その残債220万円を債務控除して申告したというものです。
解説は、お墓は非課税財産であるから、非課税財産に関する債務は、
相続税の計算上、債務として差引くことができません、です。
●未納の固定資産税・住民税
事例は、相続開始日(3月7日)には、固定資産税と住民税の納税通知書が送付されてきていなかったので、
債務控除しなかったというものです。
解説は、固定資産税と住民税の納税義務は既に成立しているので、納税通知書の有無にかかわらず
債務控除ができます、という内容です。
●団信生命保険と住宅ローン
事例は、団体信用生命保険契約に加入しているにもかかわらず住宅ローンを
債務控除しているというものです。
解説では、住宅ローンは相続人が支払う必要のない債務なので控除できません、とするものです。
●養子縁組と法定相続人の数
事例・解説では、相続税の計算に当たっては、養子の法定相続人の数は制限されている、
被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人で計算する、といった内容です。
少し前になりますが、株式会社の登記手続を定めている商業登記規則の改正で2015年2月から
登記実務が一部改正されています。
今後の手続として知っておきたい点について解説します。
◆改正事項
1.役員が新たに就任する場合、本人確認証明書を添付する。
2.代表取締役の辞任届は個人の実印を押印し印鑑証明書添付か会社実印の押印が必要
3.役員の氏名と共に婚姻前の氏も併せて登記する事ができるようになった
◆役員就任の際の本人確認証明書の添付
従来は取締役等の役員が就任した際の添付書類は就任承諾書のみの場合がありましたが、
登記の真実性向上の為、役員の実在を確認し、株式会社設立登記や就任登記、
役員変更登記の際に新たに本人確認証明書の添付をする事になりました。
再任の場合は不要ですから現在の役員が任期満了で再任された場合は対象にはなりません。
◆本人確認証明書の必要な役員とは
取締役会設置会社においては、代表取締役以外の取締役、監査役、指名委員会等の設置会社の
執行役に新たに就任する者。
取締役会非設置会社は監査役に新たに就任する者。
本人確認証明書とは住民票の写し、戸籍の附表、運転免許証写し等です。
◆代表取締役が辞任する時の辞任届
代表取締役が任期途中で辞任して変更登記をする場合に、辞任届の偽造で会社乗っ取りが
図られる恐れもあると指摘がされていました。
そこで不正防止の為代表取締役の辞任届には個人の実印を押印し印鑑証明書を添付するか、
登記所に届出している会社の実印を押印する事が必要になりました。
但し、任期満了で代表取締役が退任する時は辞任ではありませんし、辞任届は必要ありません。
◆役員欄への婚姻前の氏の記録
今まで会社の登記簿の役員名は戸籍上の氏名が登記されていましたが、
婚姻後も旧姓で活動する場合に支障を来す問題が指摘され婚姻前の氏も記録する方法が
選択できるようになりました。
登記簿に氏名が登記されている者が対象です。
戸籍謄本や住民票を添付して申請します。
◆少額減価償却資産とは
使用可能期間が1年未満のもの、取得価額が10万円未満のもの、が原則的な少額減価償却資産で、
取得し事業の用に供した事業年度の損金とすることができます。
そのほか、次の特例があります。
①取得価額20万円未満の減価償却資産
一括償却資産として、取得し事業の用に供した事業年度を含む3年間での損金経理を認めています。
②取得価額30万円未満の減価償却資産
中小企業者(資本金1億円以下の法人)の特例として年間300万円までについては
取得し事業の用に供した事業年度の損金とすることができます。
◆少額減価償却資産の金額と消費税
取得価額が10万円未満、20万円未満、30万円未満であるかどうかは、
免税事業者である場合を除き、法人が採用している消費税等の経理処理方式に応じて算定した価額により判定します。
つまり、税抜経理方式を採用している場合には、消費税抜きの価額が取得価額となり、
税込経理方式を採用している場合には、消費税込みの価額が取得価額となります。
◆少額減価償却資産の金額と圧縮記帳
資産が法人税での圧縮記帳の適用を受けたものであるときは、取得価額が10万円未満、
20万円未満、30万円未満であるかどうかの判定は、その圧縮記帳後の金額に基づいて行います。
したがって、圧縮後10万円未満なら即時の費用、20万円未満なら一括償却資産の取扱いがあり、
30万円未満なら、除外要件に該当しない限り、これも即時全額償却となります。
◆30万円未満即時償却の除外要件
なお、少額資産に係る10万円と20万円の規定は法人税法の規定ですが、
30万円の規定は租税特別措置法の規定なので、ここに異なる取り扱いが存在するので、留意すべきことがあります。
即ち、租税特別措置法には、租税特別措置法の規定の重複適用を原則排除するような規定が他方にあるので、
圧縮記帳が租税特別措置法の規定に拠って行われている場合は、30万円未満即時償却の適用は、
重複適用として、除外要件に該当することになり、適用することができません。
◆新設法人は原則として免税事業者
新規設立法人には、消費税の納税義務を判定するための前期、前々期(基準期間)がないため、
原則として設立1年目、2年目の事業年度における消費税の納税義務は発生しません。
ただし、原則に対する例外があります。
◆例外1 資本金1000万円以上
その事業年度開始の日における資本金の額が1000万円以上である法人については、
その基準期間がない事業年度であったとしても、納税義務は免除されません。(平成9年の税制改正)
◆例外2 特定期間課税売上1000万円超
上半期である半年間の課税売上高が1000万円を超えていた場合、
その翌事業年度は納税義務が免除されません。
その前年上半期のことを「特定期間」といいます。(平成23年6月の税制改正)
◆例外3 特定新規設立法人
設立された法人の50%超を保有する法人・個人を含めた株主グループの中のいずれかが、
新設法人の基準期間に対応する期間の課税売上高につき5億円超であったなら、
その新設法人の納税義務は免除されません。
この50%超の支配関係下にある新設法人のことを「特定新規設立法人」といいます。(平成24年8月の税制改正)
◆例外4 新設合併消滅会社が1000万円超
合併によってすべての会社が消滅し、新しく設立された会社が消滅会社を承継することを新設合併といいます。
合併があった日の初年度では、消滅被合併法人のいずれかが、
新設法人の基準期間対応課税売上高につき1000万円超の場合、
2年目以降は、合併・各被合併法人の基準期間対応課税売上高の合計額が1000万円超の場合、
では合併新設法人の納税義務は免除されません。
◆例外5 新設分割会社等が1000万円超
会社分割・現物出資・事業譲渡による新設法人(新設分割等承継子法人)の
その分割等があった日の初年度では、分割元等法人のいずれかが、
新設法人の基準期間対応課税売上高につき1000万円超の場合、
2年目以降は、分割・承継等の全法人の基準期間対応課税売上高の合計額が1000万円超の場合、
では新設分割等設立法人の納税義務は免除されません。
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