◆収用等による資産の譲渡課税
収用等により資産を譲渡し、補償金等を取得した場合、5,000万円の特別控除や代替資産の取得による
課税の繰延等といった税の優遇制度が設けられています。
前者の特別控除とは、収用等による資産の譲渡所得の金額(譲渡益)から5,000万円
(譲渡所得の金額は5,000万円に満たないときはその金額)が特別に控除され、課税所得が軽減される、
というものです。
一方、後者の代替資産の取得による課税の繰延とは、収用等によって取得した
補償金等の全部で代替資産を取得したときは譲渡がなかったものとされ、
譲渡所得は課税されません。
また、補償金等の一部で代替資産を取得したときは、代替資産の取得に充てられた補償金等に
対応する部分の譲渡がなかったものとされ、残りの補償金等についてだけ譲渡所得が課税される、
というものです。
なお、収用等により譲渡した資産の取得費のうち、譲渡がなかったものとされる部分に対応する金額は、
代替資産に引継がれます。
◆各種補償金の原則的な取扱い
収用等に際しては、土地等の買い取りの対価としての補償金(対価補償金)のみならず、
これに関連するすべての費用、損失等が補てん・補償されます。
例えば、収益補償金、経費補償金、移転補償金などがその例です。
この場合、これら取得した補償金のすべてが、課税の特例の対象になるか、
というとそうではありません。
特例の対象になるのは、原則、土地等の買い取り部分に対応する対価補償金のみで、
他の補償金は事業所得等の収入金額あるいは一時所得の収入金額となります。
◆例外的な取扱い(補償金の内容を吟味)
しかし、課税実務では、納税者に有利な幾つかの例外的取扱いを認めています。
1)建物等の移転補償金について
移転ではなく、現実に建物等を取壊したときは、移転補償金は対価補償金とする。
2)収益補償金のうち建物の収用等に伴って支払われる営業・家賃減収補償金
この収益補償金は、その建物の対価補償金として取扱われた金額が当該建物の
再取得価額に満たないとき、その満たない金額を、又は不明なとき、
その建物の対価補償金の額に当該建物が木造等である場合は100/65、
その他の構造である場合は100/95を乗じて算出した金額を同建物の対価補償金に振替えることができます。
◆延滞税に関する原則規定
国税通則法の延滞税に関する条文には、
①期限内申告書を提出しながら納付国税をその法定納期限までに完納しないとき
②法定申告期限後に未納税金があるとの修正申告書を提出したとき
などその他の場合に、法定納期限からその国税完納日までの期間に応じ、
その未納の税額に年14.6%の延滞税を課す、と規定されています。
◆二つの延滞税軽減規定
ただし、納期限までの期間又は納期限の翌日から2ヶ月間については、延滞税率を7.3%とする、
との規定があります。
さらに、法定申告期限から1年超後の提出となる修正申告の場合は、その法定申告期限から
1年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出日までの期間を除いたところを延滞税の計算対象期間とする、との規定もあります。
◆こんな事例ではどうなる
申告期限後5年目のところで税務調査があり、増差税額のある修正申告を提出し、
1ヶ月後に納税を済ませたとすると、延滞税の計算対象期間は修正申告書提出までの期間が
1年超なのでその部分は1年に圧縮されます。
修正申告書提出の場合の納期限はその提出日なので、納期限後1ヶ月の増差税額納付は
別途延滞税の計算対象期間となります。
◆どの税率がどの期間に課せられるのか
国税通則法では、法定納期限以後は14.6%、ただし、納期限以後2ヶ月間は7.3%となっているので、
先の例では、延滞税の計算対象期間の最初の2ヶ月と最後の1ヶ月は7.3%で、
残りの10ヶ月は14.6%となるのでしょうか。
そんなふうに読んでしまいそうですが、「納期限までの期間」は7.3%という規定があるので、
本例の場合は全部の期間が7.3%になります。
◆法定納期限と納期限の使い分け
国税通則法や国税徴収法は「法定納期限」について、その各第二条で定義規定を置いているのですが、
「納期限」については特に定義していません。
しかし、両者は異なるものとして使い分けられています。
◆措置法に税率の特例がある
なお、上記の7.3%については租税特別措置法に「公定歩合+4%」(現在は4.3%)とする
特例規定があります。
また、来年からは14.6%部分も含めた大幅な改正が施行されることになっています。
法人は、「合理的な再生計画」に基づき、再生企業が金融機関等から債権放棄を受ける場合、
再生企業の「債務免除益」に対する課税が再生を妨げることがないように、法人税制において
「企業再生税制」が措置されております。
しかし、個人事業者は、所得税制(事業所得)において同様の税制措置が講じられていないため、
個人事業者に対する債権放棄が進まず、事業再生や地域の面的再生の障害となっているとのことです。
また、事業再生の促進からは、合理的な再生計画の下、資産査定が行われている場合には、
建物・設備等に係る固定資産税の軽減措置を認める特例の創設も要望しております。
③の国際課税原則の見直しについては、外国法人の申告対象を、恒久的施設(PE)に
帰属する所得に限定することを要望しております。
OECD加盟の主要国では、外国法人が国内にPEを有する場合、
PEに帰属する所得のみを申告対象とする「帰属主義」を採用しておりますが、
わが国では、PEに帰属しているか否かを問わず、全ての国内源泉所得について申告が必要(総合主義)としており、
対内投資の阻害要因となっているとのことです。
今後の税制改正の動向に注目です。
(注意)
上記の記載内容は、平成25年10月2日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
金融庁は、2014年度税制改正要望を公表しました。
それによりますと、主な要望項目として、
①NISA(少額投資非課税制度)の利便性向上
②個人事業者に係る事業再生税制の創設
③国際課税原則の見直し(総合主義から帰属主義への変更)などを掲げております。
①では、2014年1月から開始されるNISAの普及・定着を図る観点から、
早期に同制度の利便性向上、口座開設手続き等の簡素化を図る必要があるとしております。
具体的には、NISA口座開設等の柔軟化として、1年単位で、NISA口座を開設する
金融機関の変更を認めることや、NISA口座を廃止した場合、翌年以降にNISA口座を再開設することを認めること、
また、NISA口座開設手続き等の簡素化では、NISA口座開設時の重複口座確認については、
社会保障・税番号制度を用いることとし、口座開設時における住民票の写し等の提出を不要にすることを求めております。
②の個人事業者に係る事業再生税制の創設については、合理的な再生計画に基づき、
個人事業者が債権放棄を受ける場合についても、事業用資産に係る評価損について経費算入を認めることを要望しております。
(その②へつづく)
(注意)
上記の記載内容は、平成25年10月2日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
◆法定外福利厚生制度の種類
企業の福利厚生制度には法定福利厚生制度と法定外福利厚生制度があります。
法定福利厚生制度には労働保険と社会保険があり、それぞれの条件で加入義務があります。
法定外福利制度には慶弔・見舞金制度、退職給付制度、財形貯蓄制度、健康診断費用の上積み、
家賃補助、資格取得支援、社宅、寮、食堂、食事補助、レクリエーション、社員旅行等補助、余暇施設、
介護育児休業日数上積み、その他があり、各企業の状況に応じて導入するものです。
これらの企業への導入率を見てみると1位は慶弔・災害見舞金は9割以上の企業で導入されています。
2位は退職給付で一時金と年金制度(厚生年金基金含む)、健診費用補助、4位は財形貯蓄制度、5位は家賃補助と続きます。
◆財形貯蓄制度とは
法定外福利厚生制度のうち、勤労者財産形成促進制度(財形貯蓄)を見てみたいと思います。
この制度は貯蓄や持ち家等で働く人の努力に国や事業主が援助・協力するもので
次のような種類があります。
①一般財形貯蓄・・労働者が3年以上の期間に渡り毎月と夏、冬賞与時に
賃金から天引きした額を事業主を通じて金融機関に積立てます。
いつ使うか目的は限定していません。
ですから車、旅行、教育、結婚等色々な目的に使え、不意の出費にも備える事ができます。
始めて1年たてば好きな時に払い出せます。
②財形年金貯蓄・・60歳以降に年金として受け取る資金作りを目的としています。
55歳未満の労働者が5年以上積み立て契約で定めた期間(60歳以降)から5年以上の期間に渡って年金として受け取れる制度です。
③住宅財形制度・・55歳未満の方が5年以上積み立て、マイホームの新築、購入、
工事費75万円以上のリフォームを目的とした制度です。
財形貯蓄の10倍(最高4000万円まで)の低利融資制度もあります。
尚、財形年金貯蓄と住宅財形貯蓄とを合わせて貯蓄残高550万円までは利子が非課税です。
生命保険の財形年金貯蓄の385万円より非課税枠が大きくなっています。
また、賃金から天引きする時は労働者の過半数を代表する者との控除協定を結んでおく必要があります。
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