国税庁によると、平成24事務年度(平成24年7月~25年6月)に実施された
相続税の実地調査は1万2210件で、前年度の1万3787件から1割減となりました。
法人税調査や所得税調査も同様に調査件数の減少傾向を示しています。
これは、改正国税通則法の施行で、実地調査前に11項目の通知が必要になるなど
税務調査手続きが煩雑化したことの影響を受けてのことでした。
しかし、相続税調査のなかで「海外資産関連事案」については
それほど調査件数が減っていないことも分かっています。
24事務年度の海外資産関連事案の調査件数は721件でした。
前年からほぼ横ばい(97.3%)の数字です。
相続税調査全体が1割減となっている事実と比べると、減少幅が狭かったことが分かります。
海外資産関連事案の実地調査のうち、申告漏れなどの非違件数は113件(前年比101.8%)でした。
国税庁は、相続税調査で計画的かつ重点的に取り組む項目として、
「富裕層」「無申告」「国際化」の3つのキーワードを挙げています。
この3項目が少なからず関わってくるのが海外資産関連事案です。
当局は富裕層を中心にした納税者の資産運用の国際化が進んでいることを受け、
租税条約などに基づく情報交換制度の活用などで海外資産の把握に努めているといいます。
そして、税務当局は海外資産関連事案について、「積極的に調査を実施します」と宣言しています。
わが国の中小企業において、経営者の高齢化の進展などを背景に事業承継が課題となっています。
事業承継において重要となるのが後継経営者の選定ですが、中小企業において
最も一般的なのが、実子(息子、娘)、配偶者、兄弟、娘婿などといった
親族内の人物から後継者を選定する親族内承継です。
親族内承継のメリットについてみていきますと、第一に社内外の関係者から
心情的に受け入れられやすい点があげられます。
例えば、現経営者の長男が事業を承継するのが典型的な例ですが、
この場合従業員や、取引先、金融機関などから、長男が事業を承継することに関して
正統性の確保が容易となるため、事業承継後も従業員などの人心の掌握が
容易になるなどのメリットが得られます。
第二に、後継者を早期に決定することができるため、後継者教育のための長期の
準備期間の確保が可能となる点があげられます。
後継者の育成は事業承継の課題の中でも最も重要なものの一つですが、
親族内承継の場合、後継者候補が会社に入社する前から後継者を教育することも可能になります。
そして第三に幼少期の経験、先代の下での勤務経験等により
一族の経営理念・社訓が自然に浸透しやすい点があげられます。
一方で、デメリットについてみていきますと、第一に親族内に経営の資質と意欲を
併せ持つ後継者候補がいるとは限らない点があげられます。
この場合、親族内承継に固執すると却って事業を悪い方向に導いてしまうことも考えられます。
第二に、相続人が複数いる場合、後継者の決定や経営権の集中が難しい点があげられます。
親族内承継を円滑に行うには、具体的にどのようなことに留意すればよいのでしょうか。
それを理解するために、歯車の製造、販売を行っているA社の事例をみていきましょう。
A社は、現社長の祖父が個人創業した直後から、歯車を作ってすぐに納品する
即応体制を売りにしてきました。
創業者の頃には製品ラインナップを標準化した歯車の製造販売を開始、
現在の「標準歯車のビジネスモデル」の原点は創業者の時代からできあがっていました。
その後、現社長の父が二代目社長に就任、総合カタログの発行、
営業所の開設など販路開拓を推進しました。
三代目社長には二代目の弟にあたる現社長の叔父が就任しました。
現社長は母親から常日頃「お前が跡取りだ」と言われて育ったこともあり、
小学生の時から将来A社の経営者になることを意識していました。
大学卒業後、米国の得意先での勤務を経てA社に入社、入社後は営業所勤務や
工場の生産管理などの現場での経験を幅広く積みました。
その後、営業部長の勤務を経て先代社長の下で常務取締役に就任しました。
この間経営の基本を教わった後、39歳で四代目の社長に就任しました。
現社長は、標準品化した歯車だけを生産するのではなく、
より顧客のニーズに応える必要性を感じて、社長就任後に計画生産で標準歯車を生産する工場と、
顧客の個別のニーズに対応する工場の二本立てに区分するなどの経営革新に取り組みました。
このように、親族内承継においては、後継経営者を早期に決定し、
入社前に広い経験を積ませるとともに、入社後も社内の幅広い経験を積ませることが求められるのです。
◆課税→免税のときの棚卸資産
課税事業者が新たに免税事業者となる場合で、課税事業者期間の末日において
所有する棚卸資産のうちに、課税事業者期間中に仕入れた棚卸資産がある場合には、
その棚卸資産に係る消費税額は、その課税事業者期間中の仕入れに係る消費税額の計算の
基礎となる課税仕入れ等の税額には含まれないこととされています。
税抜仕訳の場合には、仮払消費税を消去して期末棚卸資産は税込価額にしておかなければなりません。
◆課税→免税のときの仕入値引返品等
課税事業者期間中の仕入れについて、免税事業者になってから仕入値引割戻返品が
あった場合には、その対価の額の中に含まれていた消費税額は
認識しないことになっていますので、全て税込価額で処理します。
課税事業者期間中の仕入に係る商品等で免税事業者になった最初の期首に
有していたものを、その後仕入返品する場合にも、その対価の額の中に含まれていた
消費税額は認識しないことになっています。
前記のような期首棚卸資産を税込価額に処理し直していたことと、つじつまの合う関係になっています。
◆課税→免税のときの売上値引返品等
課税事業者期間中の売上について免税事業者になってから売上値引割戻返品があった場合、
又は貸倒れが生じた場合や消却債権取立益を得た場合にも、その対価の額の中に含まれていた
消費税額は認識しないことになっていますので、すべて税込価額で処理します。
なお、課税事業者期間中の売上に係る売上返品により増加した棚卸資産については、
税込価額への変更処理が要求される期首棚卸資産と同じく、
期末まで在庫品として残った場合には、税込価額で期末棚卸資産の経理処理をすることになります。
◆売上戻り商品を売上げると
免税→課税の移行期においては、売上戻り品の売上げで、
免税事業者期間の消費税額が課税事業者になってから強制的に損金算入され、
税込価格仕入額と税抜課税売上額が対応させられる不都合が生じます。
それに対し、課税→免税移行期では、全てが税込取引で例外なく処理されるので、
平仄の合わない不都合は生じません。
◆離婚時の年金分割とは
年金分割の基本的な仕組みは、離婚当事者の婚姻期間中の厚生年金保険や
共済組合の保険料納付記録を離婚時に限って当事者間の分割を認めるというものです。
分割は平成19年4月1日以降に成立した離婚が対象です。
分割に当たり、間違えやすいケースを見てみます。
◆夫の年金全額が分割対象という誤解
分割は厚生年金(報酬比例部分)や共済組合(職域部分を含む)が対象で
基礎年金部分には影響しません。
ですから自営業等でずっと国民年金しか加入していなければ分割できませんし、
厚年基金も代行部分以外は対象外です。
対象期間も婚姻から離婚までの期間とされ、按分割合を決めるのは当事者各々の
保険料の納付実績の比較をして標準報酬額の再評価で額の多い人が
少ない人に分割を行います。
ですから場合によっては夫が自営、妻が会社勤めで妻の方が夫より年金が多ければ
夫に分割して渡すと言う事態もあるかもしれません。
◆専業主婦は無条件で2分の1と言う誤解
平成20年4月から3号被保険者(専業主婦・夫)が請求すれば
夫婦の合意がなくとも配偶者の厚生年金や共済年金の半分が受け取れる3号分割制度は、
その対象はH20年4月以降の期間です。
それ以前の期間分は話し合いが必要です。
当事者間の合意ができない場合は求めに応じ、裁判所で定める事も出来ます。
◆分割後年金は自動的にもらえると言う誤解
分割手続きは離婚した翌日から2年以内に「年金分割の為の情報提供請求書」や
「標準報酬改定請求書」を年金事務所に提出します。
これは分割する保険料納付記録だけを請求するのですから、
実際に受給するのは受給期間を満たし、定められた受給開始年齢に達した時、
年金の裁定請求書を提出して受け取る事になります。
◆元夫の死亡や妻の再婚で分割分は消滅と言う誤解
分割年金は自分が再婚しても、元夫が死亡した時も保険料納付記録は消えません。
又、事実婚の夫婦は婚姻期間の特定が困難と言う理由から基本的に
分割の対象外とされています。
但し、第3号被保険者として認定されていてH19年4月以降に関係が解消されたと認められる場合は対象となります。
公正取引委員会が下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づく
平成25年上半期の取り締まり状況と法違反事例を公表しました。
下請法は親事業者に対して禁止行為を定めていて、その内容は、
受領拒否、支払い遅延、下請代金の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、
報復措置、有償支給材料等の対価の早期決済、割引困難な手形の交付、不当な利益の提供要請、
不当な給付内容の変更・やり直し――の11項目となっています。
公取委が勧告・指導した違反事例を見てみると、「支払い遅延」では、
電子部品の加工を委託した下請事業者からの請求書の提出が遅れたことを理由に、
加工をさせたにも関わらずあらかじめ定められた支払い期日を経過して
下請代金を支払っていた親事業者が指導を受けました。
「減額」の例としては、漆器の製造を委託している下請事業者に対し、
卸売業者が「カタログ作成協賛金」として一定額を下請代金の額から減らしていたことが
分かっています。
また、鋳物製品の製造の委託先と単価引き下げ改定を取り決めた鉄鋼業者が、
引き下げ前の単価で発注した製品までさかのぼって新単価を適用した例もありました。
「返品」では、婦人服の製造を委託している下請事業者に対し、
ただちに発見できない瑕疵を発見したとして、商品を受け取ってから6カ月後に
返品した繊維工業事業者が指導を受けています。
「不当な経済上の利益の提供要請」については、利益がどれだけ見込めるのかを明らかにせず、
下請事業者に無償で人員を派遣させ、自社店舗の接客販売、在庫管理、棚卸し作業を行わせていた例もありました。
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